沖縄県医師会 > 健康の話 > うちなー健康歳時記 > うちなー健康歳時記2008年掲載分 > 内頚動脈狭窄症

内頚動脈狭窄症(2008年9月29日掲載)

甲斐豊(琉球大学医学部付属病院)

ふらふら、目のかすみ注意

近い将来、脳梗塞の恐れ

内頚(けい)動脈狭窄(きょうさく)症って何でしょう?

脳の血管が急に詰まる病気が脳梗塞(こうそく)ですが、その原因として頚動脈が少しずつ細くなってくるものがあります。最近では糖尿病、高脂血症、高血圧症といった生活習慣病の増加に伴い、大変増えています。内頚動脈が少しずつ細くなりますが、症状はありません。

「ふらふらする、転びやすい、手足の力が抜ける、しゃべりにくい、目がかすむ」など一過性の症状を経験される方がいます。これは一時的に脳や眼球へ血の塊である血栓が飛んで血管が詰まったり、大脳全体の血行が悪くなって起こるとされ「一過性脳虚血発作」といわれています。

症状を認めた場合、近い将来、大きな脳梗塞で急に倒れる危険性が高いと考えられます。内頚動脈は太い動脈なので症状が出た場合には重症化し、致命傷となったり、助かっても重い障害が残ることが多いのです。

診断方法は頚動脈の超音波エコーにより、体に負担なく短時間で診断ができます。また、頚動脈のMRA(MRIを使った血管撮影)や三次元CTA(CTを使った血管撮影)を追加すると、さらに詳しく調べることが可能です。

内頚動脈狭窄症と診断された人は、たとえ無症状でも飲み薬(抗血小板薬)の治療が必要です。これは血液をさらさらにすることで血栓をできにくくする作用の薬です。超音波検査で50%狭窄を超えて動脈が細くなっている人は薬の内服を始めましょう。70%を超えると、飲み薬だけで脳梗塞を予防することが難しく、治療で血管を広げた方が良いとされています。

内頚動脈の狭くなった部分を広げる治療法として、内頚動脈内膜剥離(はくり)術とステント留置術があります。内膜剥離術は、全身麻酔が必要で頚部を切開し、血管中のかすを直接取り除きます。

ステント留置術は血管の狭い部分を風船で拡げステントという筒状の金属を留置する手術で、二〇〇八年四月から保険適用となった新しい治療です。かすが再び頭蓋内の血管につまらないようステントの先にフィルターをおいて治療します。

長期的な治療効果について科学的根拠がまだ不十分ですが、頚部の切開が不要なカテーテル治療で行えることや局所麻酔で可能なことなどメリットもあり、全身麻酔ができない方にお勧めです。いずれの治療法を選択するにしても、脳卒中の専門医とよく相談をして決めることが大切です。