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旅の心得2(2008年9月1日掲載)

與那覇博康(県立八重山病院)

楽しみはほどほどに

事前の健康管理がこつ

以前、旅先の病院で受診するにあたっての留意点について述べさせていただきました。今回は受診する事態にならないように、生活管理についてお話します。

とはいっても、魔法のようなこつがあるわけではありません。やはり前にも述べた“楽しみはほどほどに”という点がポイントです。

旅先だと、普段はやらないことでも、ついつい頑張ってしまいます。特に、日ごろ忙しくてあまり子どもにいい顔ができないお父さんは、名誉挽(ばん)回(かい)のチャンスとばかりに必死になります。新婚旅行以来、まともに相手をしたことがない妻の労をねぎらおうと、慣れない旅行計画で四苦八苦します。それでも家族の喜ぶ姿に心救われる思いなので、疲労困憊(こんぱい)しながらも頑張ります。

旅行というものは“非日常”を経験できるからこそ楽しいのですが、その分、心身にかかるストレスも多大なもの。怖いのは本人がそのストレスを認識していないことです。

旅行に行って楽しんでいるつもりが、目的地に着いてしばらくすると胸の不快感を訴えて来院した方が心筋梗塞(しんきんこうそく)だったというケースは、過去にいくらでもあります。お話を伺うと、旅行に行く数日前から調子が悪かったようですが「ちょっと疲れて風邪でもひいたかな?」くらいに考えていたようです。

同様に、旅行前から頭痛があったけれども、飛行機に乗っている間にかなりひどくなり、到着して受診したところ「くも膜下出血」だったという方もいらっしゃいます。この方も最初は「風邪でもひいたのかな?」と思っていたようです。

このように、多くの方は調子が悪いと「風邪かな?」と思うのが常です。もちろん大抵は本当に風邪をひいているか、ただの疲労ですが、中には先に例を挙げたように重篤な方もいらっしゃいます。普段から心臓や肺が悪かったり、高血圧や糖尿病、高脂血症などで診療を受けている方や免疫が弱った状態の方は特に注意が必要です。大切なことは風邪かな、と思ったら無理をせずに休むことです。

せっかく旅行に来たのだからと120%楽しみたい気持ちは分かりますが、あまり旅慣れない方は楽しむ気持ちを70―80%くらいにして、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。休んでいても調子がおかしいなと感じたら、病院に行って診察を受けてください。

せっかくの旅行を台無しにしないためにも、旅行前からの健康管理は大事なのです。