せっかく脳ドックを受けられたのに、上手に活用できていない方がいます。そこで、脳ドックの上手な受け方について紹介します。
脳ドックは脳の病気、特に脳卒中を予防しようと始まりました。脳卒中とは、脳の血管がつまったり、破れたりして、脳に障害が起こる病気を総称した呼び方です。脳梗塞(のうこうそく)、脳出血、くも膜下出血などが挙げられます。
一九八〇年ごろ、脳卒中はわが国の死因の第一位でしたが、近年ではがん、心臓病に次いで第三位となりました。といっても、脳卒中になる人が減ったわけではありません。医学の進歩によって死亡率が下がっただけで、脳卒中の患者数は逆に増えています。脳卒中はいったん起こると後遺症が残り、その後の生活が不自由になります。これらの問題を解決するために、脳卒中予備軍の人を見つけ、予防しようと始まったのが脳ドックなのです。
対象となる病気は、これまでに症状の出ていない脳動脈瘤(どうみゃくりゅう)、動脈硬化、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍(のうしゅよう)など。脳ドックをぜひお勧めしたいのは(1)中・高齢者(2)高血圧、脂質異常、糖尿病、肥満、喫煙(3)血縁に脳卒中の人がいる方―です。検査の種類は施設や保険外診療などの費用によりさまざまですが、必ず行うのがMRIです。これで脳や脳動脈などを調べますが、最新のMRIを使って正確に判断できる割合は九割程度とされています。
さて、ここからが本題です。大切なのは異常があった場合の対処の仕方です。重要なポイントをいくつか挙げたいと思います。
まず、放っておかない。せっかく早期発見できて予防のチャンスがあったのに、病気が起こってから来院される方がいます。脳の病気は一度起こると、一生後遺症に悩まされます。命を落とすものもあります。早めに病院を受診してください。
次に、慌てず冷静に。異常という結果に驚いてしまい、冷静さを失う人がいます。まず病状を理解し冷静に判断する必要があります。結果を聞くのが不安という方はご家族同伴で病院にいらしてください。
そして、分からないことをそのままにしないこと。病状や治療方針で分からないことをそのままにしていると正しい判断ができません。分からないことは医師に聞いてください。それでもよく分からない、判断に迷う、という場合には、検査データを借りてセカンドオピニオンを求め、ほかの病院で意見を聞く方法もあります。
最後に、脳ドックを受け異常がないことで安心することも良いでしょうが、本来の目的は「早期発見、早期治療」なのです。ドックを上手に利用しましょう。