九月九日は「救急の日」です。今年も九月七日から一週間、救急週間が始まります。期間中、各市町村の消防署や医療機関などで催しが行われ、国民に救急のあり方を考えてもらうことを目的としています。
近ごろ、突然の心肺停止を来した患者が、周囲の人々の“救命の連鎖”によって一命をとりとめ、障害もなく社会復帰していることが話題になっています。
わたしが救急専門医として市民に救急蘇生(そせい)法の指導を始めたのは二十数年前のこと。市民に蘇生法を普及しようと、蘇生人形を抱え中部地区の自治会を訪ねていました。
あるとき、自治会事務所を訪ね、指導に伺いたいと会長にお願いすると「それは任意ですか、強制ですか」と言われ、唖然(あぜん)として帰ったことを思い出します。当時の心肺蘇生といえば、救急隊員が施してくれるものと考えられていました。今では市民の間に蘇生法が広く浸透しているようで、本当に隔世の感を禁じ得ません。
さて、皆さんは「心臓震盪(しんとう)」という言葉をご存じでしょうか。アメリカでは一九九〇年代から「子どものスポーツ中の突然死」として、また、わが国では二〇〇七年に高校野球の名門校で、野球の練習中に送球を胸に受けて死亡した事故などの報道により、注目を浴びるようになりました。
心臓震盪は十八歳以下の青少年に起こり、心臓を外力から防御する胸骨がまだ柔らかいため、バットやボールが当たった場合、その衝撃が心臓に伝わり不整脈を生じさせ心停止に至ります。この場合、心臓マッサージやAEDなど適切な処置を施さなければ、死に至ることになってしまいます。その多くは球技の競技中に起こっているようです。
では、スポーツをしない子どもの両親は安心していていいのでしょうか。実は、心臓震盪はその衝撃の強さよりもぶつかった時のタイミングが問題と言われています。野球に限らず、サッカーやバスケットボール、ドッジボールなどさまざまなスポーツで起こります。
さらに、教室内で子どもたちがふざけあって、ひじが胸にぶつかったりしたような場合でも起こります。従って、いつでもどこでもどの子どもでも、心臓震盪は起こるものとしてとらえなくてはなりません。
学校は子どもたちにとって安全な場所であるべきという考えから、メーンテーマに“学校現場にAEDを普及させよう!!”を掲げ「第四回県民救急災害フォーラム」を九月七日、県総合運動公園内レクレーションドームで開催します。
学校関係者やスポーツの指導者には救命救急講習会の受講をお勧めします。
多数の来場をお待ちしております。