沖縄県で介護が必要な認知症者の割合が「六十五歳以上の九人に一人」と聞くと「えっ、そんなに多いの?」と驚かれるかもしれません。これは二〇〇七年度の県の統計数値で、全国推計より八年も早く認知症者が増えています。
認知症とは「脳の働きが低下し、日常生活に支障が起きて介護が必要な状態」のことをいいます。認知症の一部は、できるだけ早めに発見して、適切な治療を行うと症状がずいぶんよくなります。まれに認知症そのものが治ってしまうこともあります。認知症を年のせいと思わず、必ず病院で検査してもらうことをお勧めします。
検査の結果、治すことが難しい認知症の場合でも、病気の進行を多少遅らせたり、介護を難しくしているさまざまな認知症の症状を治療していったりすることができます。
アルツハイマー型認知症は、病気の始まりから極端なもの忘れが目立ちます。昔のことはよく覚えているのに、最近のことをすっかり忘れます。物の形や空間の理解が不得手になったり、慣れた場所でも迷子になったりします。
脳梗塞(こうそく)や脳出血のあとに起きる認知症は脳血管性認知症です。言葉の障害や手足のまひ、歩行の障害が出て、怒りっぽさや涙もろさなど、感情の不安定さが表れます。脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症が同時に起きることもあります。
レビー小体型認知症は、身体のこわばりや歩行の障害など、いわゆるパーキンソン病と似た症状が表れます。具体的な幻視や、転びやすさ、症状がしばしば変動することが特徴です。
前頭側頭型認知症は、脳の前頭部や側頭部が極端に縮んでくる認知症です。病気が結構進行しても、もの忘れが少なく、性格や行動面の変化が目立ちます。だらしなくなったり、道徳観念が低下した行動をしたり、まったく意欲がなくなったりします。日常生活では、ワンパターンでいつも決まった通りの日課を行う傾向が現れます。前頭側頭型認知症の一部は、言葉の障害が主として表れる場合もあります。
認知症というと、もの忘れをする病気と考えがちですが、判断や理解力が低下し、日常生活でさまざまな失敗をしてしまう病気であることを理解してください。日付を間違えたり、失禁したり、落ち着きのない行動をするのも、脳の働きが低下して本人も戸惑っているからです。本人が安心して過ごせる環境づくりをすると、少しずつ落ち着き、認知症の症状が目立たなくなることがあります。
認知症の人は、記憶の力が低下しても感情の心は保たれています。本人が安心して過ごせるよう周りの人の理解と支援が大切です。
認知症の診断・治療に応じている医療機関については県立総合精神保健福祉センターにご相談ください。