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トーフヌカシー(2008年7月8日掲載)

赤松道成 北部地区医師会病院

袋状の皮膚にたまる垢

バイ菌感染前に摘出を

粉瘤(ふんりゅう)という病名を聞いたことがありますか。沖縄ではトーフヌカシーと言う方が一般的かもしれません。外来をしていると、しばしば背中または前胸部などにしこりがあり、赤く腫れて痛いとの理由で、受診する方に出会います。話を伺うと、以前からあったしこりがここ数日の間に赤く腫れ、痛みも出てきたとのことです。この多くが、感染した(バイ菌がついた)粉瘤です。

粉瘤とは何でしょうか。これは表皮の組織が、皮膚の下で袋状になってしまったものです。表面には中心に小さなくぼみがあるだけですが、その奥には皮膚でできた袋があるのです。

皮膚は新陳代謝により、常に新しい細胞が奥から上がってきます。仕事の終わった表面の細胞は垢(あか)として落ちていきます。しかし、粉瘤では皮膚が袋状になっているため、できた垢はその袋の中にたまってしまいます。これが白く、豆腐のかす(おから)に似ていることから「トーフヌカシー」と呼ばれているようです。脂肪の固まりと考えている方が多いようですが、実は垢なのです。

粉瘤では、出口として小さな穴しかないため、垢が出ることができず、徐々にたまっていきます。そのため、年々しこりは大きくなり、中には10センチにもなってから外来を受診する方もいます。

このような垢の固まりですので、バイ菌にとっては非常に住み心地の良い場所です。中には餌となる垢がたくさんありますから、いったん表面の小さな穴からバイ菌が入ってしまうと、どんどん増えていき、膿(うみ)を持ってしまいます。これを感染性粉瘤と呼びます。患部は赤く腫れあがり、熱を持ち、痛みを伴います。

治療は、感染していなければ、出口を含め皮下の袋を摘出します。皮膚は縫合し、七―十日後に抜糸します。袋ごと摘出すれば再発はありません。

しかし、感染していれば、皮下の袋状構造物は破壊されていることが多く、皮膚を切開して膿を出すだけになります。できるだけ袋も摘出しますが、袋の一部が残ってしまうと、また内容物がたまって、再発しかねません。感染した傷を縫うと、再び皮下に膿がたまることになるため、皮膚は縫わずに治るのを待たねばなりません。これは治癒までに二―三週間もかかり、傷跡も目立ちます。

完治、傷跡、治療期間を考えても、感染前に摘出する方をお勧めします。

自分の体に、小さなくぼみを持ったしこりがある方は、粉瘤かもしれません。感染する前に皮膚科、外科、形成外科を受診し摘出することをお勧めします。