血圧は年齢とともに高くなります。これに塩分やアルコールの過剰摂取といった生活習慣が加わると、さらに上昇し、高血圧(一四〇/九〇ミリメートルHg以上)になりやすくなります。そのまま放置しておくと、知らず知らずのうちに動脈硬化は進行し、血圧が下がらなくなる悪循環が起こります。そして脳卒中、心筋梗塞(こうそく)、腎不全などの動脈硬化による病気で亡くなってしまいます。
このことから、高血圧は「サイレント・キラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれています。高血圧の人は、糖尿病や高脂血症といった病気も合併しやすく、動脈硬化の危険性はさらに倍増することが分かっています。
内臓脂肪の多い人に、血圧・血糖・中性脂肪のわずかな異常が複数重なった状態が、皆さんご存じのメタボリック症候群です。最近の研究では、メタボリック症候群の人も高血圧や糖尿病の人と同様に動脈硬化が進行することが分かってきました。
動脈硬化を予防し、血管をしなやかに保つためには、血圧や血糖・脂質を下げ、少しでも危険性を減らしていくことが大切なのです。特定検診も開始され、ちょっと血圧が、ちょっと血糖・脂肪が高いという人は、個人の生活習慣に合った健康管理を要求される時代となってきたのです。
一口に高血圧といっても、いろいろなタイプがあります。緊張やストレスから、一時的に血圧が上昇するタイプや、夜間も血圧が下がらず、一日を通して高血圧が持続するタイプ、日中の血圧は決して高くないけれど、起床時の血圧が高くなるタイプなど、さまざまです。動悸(どうき)・息切れ、めまい・ふらつきなどの症状があったり、心電図や尿検査で異常が見られるようであれば、かなり動脈硬化が進行していることが予測されます。
最近は、手足の血圧を測定して血管(動脈硬化)年齢を類推する検査(図)や、早期動脈硬化の目安となる血管(内皮)機能を測る検査が可能になりました。血圧の管理や動脈硬化の早期診断・治療のために有効に用いられています。検診で異常を指摘された方は、自分の血圧の状態を正確に診断してもらい、動脈硬化の進行を予防するため、かかりつけの医師か専門医に早めにご相談されることをお勧めします。
動脈硬化が進行する前に、生活習慣の改善を含めて治療を始めれば、薬を飲まなくても血圧は下がるかもしれません。薬が必要でも、薬の数が少なくてすむ可能性があります。
生活習慣の多様化する近年、ご自分の健康状態を振り返って生活習慣を見直されてはいかがでしょうか。日ごろからのちょっとした工夫で、しなやかな血管を保って、いつまでも健やかに過ごしていただきたいと考えます。