誰もなりたくてけがや病気になるわけではありませんが、それでも思わぬ事故や心身のトラブルに見舞われることはあります。そんなとき、どうしても診療所や病院で受診しなくてはならないこともあります。
観光地にいるためか、旅行者の傷病の診療にあたることが多いのですが、そのとき、いつも「なぜみんなこうなのだろう?」と思うことをまとめました。困った状況になるのは、以下のようなときです。
(1)健康保険証を持っていない(2)いつも服用している薬を忘れた(3)普段から通院しているが、自分が何の病気で、どんな薬をもらっているか分からない(4)医師から旅行の許可が出ていないのに、無理をして旅に出た(5)体調が悪いのに、今日の飛行機で戻らないといけない―。
以上五点が主に挙げられますが、もっと基本的なところでは「診療所、病院の場所が分からない」「最低限のお金しか持っていないので診療費が払えない」ということもあります。
最後の二つはさておき、(1)の場合、単純に忘れた人もいますが、「自分が病気になるはずがない!」と過信し、特に若い人は意図的に持ってこない人もいます。
中には健康保険そのものに加入していなかったり、保険証の有効期限が切れていることもあります。とにかく旅に出るときには、保険証はきちんと持参するようにしましょう。
もし保険証を忘れたら、病院によってはその場で病院あてにファクスなどでコピーを送ると了解されることもありますので、病院の受付窓口で尋ねてみてください。
保険証がないときは、いったん全額を自費で支払い、旅行から帰って手続きをすればお金が戻ってきますが、一時的に大きな出費になり、手間もかかります。
(2)、(3)に関しては、患者さんだけでなく主治医の責任も大きいと思います。最近は、患者さんが自分の病気や薬のことをきちんと知ろうとする方が増えてきましたが、いまだに「医者任せ」にしている方もいます。
医療者側が情報提供を怠っていることも多々あります。特に心臓病や脳の病気などで薬を処方されている方は、薬によってはかなり注意を要するものもあります。
すべてとは言いませんが、何かしらの病気で通院して治療を受けている方は、旅行の際、主治医から診療情報提供書(紹介状)と「おくすり手帳」を持参するようにしてください。
(4)、(5)の場合、患者さんの気持ちはよくわかりますが、やはり無理はいけません。格安航空チケットやパッケージツアーを予約していて、変更できずに無理をして旅行に出た方を何人も診ましたが、チケット代以上にお金が掛かってしまうことが多いのが現実です。
旅は楽しくて、そのためならどんな苦労もおしまないのも人情ですが、やはり一番大事なのは心と体です。楽しみもほどほどに…。