肺がんは増加の一途をたどっており、日本人男性のがん死亡率の第一位、女性で第三位となっています。また、沖縄県は肺がん死亡率の高い県でもあります。
肺がんは悪性度が高いこともありますが、残念ながら発見されたときにはすでに進行がんであることが多いのが現状です。
進行した肺がんには、内科的治療「化学療法・放射線療法」が行われます。
幸いにも比較的早期で発見された場合、具体的に言うと腫瘍(しゅよう)が小さく、空気の通り道である気管の周囲のリンパ節が腫れておらず、遠隔転移もない場合には、外科的治療である「手術療法」が行われます。最近では胸腔(くう)鏡を使って手術を行うことも多く、小さな傷で手術後の痛みも苦にならないようになっています。
手術で腫瘍を取りきることができれば万々歳なわけですが、それで「すべてOK」というわけにはいきません。腫瘍が大きく、病理組織検査(顕微鏡でみた結果)でリンパ節に転移を認めた場合には、手術の後に抗がん剤投与といった化学療法を行わなければならないことがあります。
その根拠は、手術後、何もしないよりも、引き続き化学療法を行った方が長生きできるという比較試験の結果が出ていることにあります。
現段階で推奨されているのは、リンパ節に転移がなくても腫瘍が大きい場合は、経口の抗がん剤を一定期間内服することです。またリンパ節に転移がある場合には、点滴での抗がん剤を四コース行うことです(「一コース」とは、三―四週間に一回の抗がん剤を点滴することです)。
「せっかく手術が終わったのに、更に三―四カ月も入院しなければいけないのか」と思うかもしれませんが、最近では、多くの病院で「外来化学療法室」が整備され、外来で抗がん剤の点滴を受けることも可能です。
また、昔テレビで見たように悪心・嘔吐(おうと)のような、副作用でつらいというようなことは制吐剤の投与等でほとんどみられなくなっています。抗がん剤の副作用対策は着実に進歩しています。
肺がんに関しては、手術の後の経過観察も大切なことです。手術で取ってしまえば「それでおしまい」というわけにはいかないことも多々あるのです。
腫瘍が小さくリンパ節転移がなかった場合でも、定期的に外来で検査をして再発がないか、そして新たながんが発生していないかをチェックしなければなりません。
誰もが肺がんになってしまう可能性はあるわけですから、とにかく早い段階で見つけることが肝心です。
そのためには積極的に検診・人間ドックのような健康診断で胸のエックス線写真を撮るようにしてください。
自己負担は軽くないかもしれませんが、肺を輪切りに撮影できるCT検査では、胸のレントゲン写真では見落とされてしまうような肺がんも見つかることがあります。
気になる方は一度、検査を受けてみることをお勧めします。