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消化管の不思議(2008年3月11日掲載)

比嘉良夫(比嘉胃腸科内科)

内臓だが体外と接する

快食快便のため受診を

「人は一本の管(くだ)である」―、学生時代にある友人が言った言葉です。管というのは、胃や腸などの消化管のことです。もちろん人体は脳や心臓など生命を維持する重要な臓器やそのほかの器官があり、人を一本の管と決めつけるのは異論がある方もいると思われますが、消化管という視点から見た場合、人は一本の管であると言えるでしょう。前記の言葉を聞いた時、ある意味感動しました。人は一本の管であるおかげで、快食快便で日々元気よく過ごせると思います。

消化管は不思議な臓器で、内臓であるにもかかわらず体外と接しています。食べ物は消化管の表面から吸収され、体内へと運ばれます。口から入るものは食べ物のほか、化学物質、病原体などがあり、さまざまな物が消化管を通過します。それゆえ消化管は、かなり丈夫なものだといえます。

多くの人の胃や腸は、普段、何の文句も言わず、黙々と働いています。しかし、一方では病気を抱え、悲鳴を上げている場合もあります。胃の痛み、吐き気、便秘、下痢など数々の症状がそのサインです。

消化管の病気の多くは表面を覆う粘膜の病気です。粘膜とは、体の表面を覆う皮ふにあたる部分で、体外と体内との境界です。また、体外の物を体内に取り込む通路にもなっています。

粘膜の病気でよく聞くのは、食道炎、食道がん、胃潰瘍(かいよう)、胃がん、大腸ポリープ、大腸がんなどです。

この中には、症状がほとんどない病気もあります。食道がん、胃がん、大腸がんなどは、初期には症状が軽かったり、ほとんどないことも多いのです。そのため、これらのがんは、自覚症状が出てからの受診ではかなり進行していることも多いです。

進行したがんが発見された場合、治療が難渋することも少なくありません。その結果、病魔に打ち勝つ人もいれば、残念ながら亡くなられる方もいます。

診断が遅れ、残念ながら亡くなられた場合、かかわりのある方々がつらい思いをします。逆に早期がんのうちに発見し治療することができれば、多くの方が命を落とさずにすむことも事実です。

幸い、わが国には世界に誇れる胃がん検診、大腸がん検診があります。胃カメラやバリウムを用いた胃透視では、食道がんを見つけることもできます。

こうした検査は、がんの早期発見、早期治療を実現し、多くの命を救おうという使命のもと、日本中で行われています。早期がんはもちろん、進行がんでも、より小さなうちに発見することで、早い段階で治療することができ、多くの命を救う事ができます。

あなたの将来の快食快便のために胃がん、大腸がん検診をぜひ受けてくださるようお願いします。また、症状のある方はぜひ、最寄りの医療機関を受診されてください。これまで、きついからと受けずに過ごしていた胃カメラや大腸カメラはより楽に受けられるように前処置(検査前に行うのどの麻酔など)や機器が進歩していますし、検査を行う医師もより正確に診断し、より確実に治療できるように、日々努力しています。