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下肢静脈瘤(2008年2月26日掲載)

池村綾(中部徳洲会病院)

脚にむくみ、ボコボコ

注目集めるレーザー治療

脚の血管が浮き出ていたり、ボコボコしていて素足を出すことができない、立ち仕事を続けると脚がむくんだり、疲れやすい、または痛みがでるなどの症状は、ありませんか?これは、下肢静脈瘤(りゅう)が原因かもしれません。

下肢静脈瘤は、下肢の血管が盛り上がって蛇行し、美容的に悪いだけでなく、脚の疲れ、むくみ、だるさ、痛みなどの症状が出現します。また夜間に脚がつる(こむら返り)なども特徴的な症状です。

重症化すると、血栓性静脈炎(静脈が硬く触れ、発赤、痛みを伴います)や皮膚の硬化、色素沈着を起こしたり、潰瘍(かいよう)を形成することもあります。

また最近では、下肢静脈瘤があることで、エコノミークラス症候群の危険性も高くなるといった報告もされています。

下肢静脈瘤は、妊娠、出産、メタボリック症候群、立ち仕事など過剰な腹圧がかかることにより、下肢静脈の中にある逆流防止弁が壊れることで起こります。

足は、「第二の心臓」ともいわれ、ふくらはぎの筋肉収縮運動で静脈血を心臓に戻します。その際、静脈血が通る下肢静脈の弁が壊れていると(頻度では脚の付け根の部分がもっとも多い)、そこから静脈血が逆流し血管が押し広げられ瘤のように膨らんだり、しみ出した水分で脚がむくんだりするわけです。

下肢静脈瘤の治療に関しては、(1)弾性ストッキングの着用や脚を枕などで高く上げた状態での安静・就寝などの保存的治療(2)硬化剤を血管内に注入し、悪くなった静脈を閉塞(へいそく)させる硬化療法(3)逆流が起きている静脈を物理的に取り除く手術治療―、などがあります。

外科的手術には、逆流して悪くなった静脈を引き抜くストリッピング手術、逆流している静脈を縛って切り離す高位結紮(けっさつ)術などがあります。ストリッピング手術は腰椎(ようつい)麻酔、または全身麻酔が必要で入院を要し、神経障害や出血などの合併症が起こることがあります。

また高位結紮術は、局所麻酔で行えますが、再発が多いなどの欠点があります。

手術治療の中で、現在注目を集めているのがレーザー治療です。特殊なレーザーファイバーを静脈内へ挿入して行う、血管内治療のことです。

レーザー治療は、局所麻酔で手術が行え、手術に伴う傷がほとんど目立ちません。手術時間が短く、手術当日に帰宅できる(日帰り手術)というメリットがあります。

また治療効果に関しても、現在一般的に行われている治療と比較して遜色(そんしょく)ない結果が出ています。

この治療は始まったばかりのため健康保険適用が認められておらず、自費診療となります。しかし、入院の必要が無く、翌日から通常の日常生活が送れることを考えると、大変有益な治療法と考えられます。

下肢静脈瘤の治療は、医療技術・医療材料の進歩に伴い、選択肢が広がってきました。下肢静脈瘤でお悩みの方は、血管外科の受診をお勧めします。