「セカンド・オピニオン」―最近、よく耳にする言葉です。医療の現場で、自分自身が受ける診療に関して、きわめて専門的な知識を必要とする内容の意思の決定や選択をする際に、その分野の複数の専門家の意見を聞くこと、と定義されています。つまり、主治医以外の意見をも聞いてみることになります。患者さんには、セカンド・オピニオンを求める権利が、保険診療上も保証されています。主治医に気兼ねすることなく、納得のいく検査、治療を受けることができます。
県内のセカンド・オピニオン外来の現状について調べてみました。七施設で開設されており、料金は時間制で、三千円から一万五千円、平均して五千円から一万円が一般的な費用です。各病院の地域連携室を通じて予約することができます。
現代は、情報化社会です。医療に関する情報はインターネットでも検索が可能ですが、基本的には「かかりつけ医」に相談し、適切なアドバイスを受けることが大切です。
セカンド・オピニオンを受ける際は、これまでの診療の記録とレントゲン写真等の資料を持参すること、相談の目的を明確にしておくこと、聞きたいことを整理し、メモにしておくと三十分以内で十分な説明を受けることができます。
次に、当院のセカンド・オピニオン外来の現状を紹介します。二〇〇五年四月から〇七年七月までに百七十四件の相談を受けました。患者さんが一人で相談に来られることはまれで、家族同伴、または家族だけでの相談がほとんどでした。平均すると毎月十件程度になりますが、「がん」に関連した相談が多いため、男性の相談が多くみられました。診療科別では、呼吸器内科・外科が九十八件、緩和医療が六十六件、神経内科十件でした。相談の内訳は、その病院の診療の内容と専門性により多少幅があります。
一例を挙げると「CT検診で見つかった小さな胸部レントゲン写真上の陰影を手術すべきかどうか」「学童期の肺の病気を即、治療すべきか、夏休みまで待てるかどうか」「肺の手術を受けた後に、抗がん剤を使うべきかどうか」「大腸がん手術後の肺への転移の治療は、抗がん剤を用いるべきか、それとも手術か」「治療手段が無いと告げられた病気の今後の対応をどのようにすべきか」―などなど、相談内容は多彩です。そして切実です。
乳がんが肝臓、肺、骨へ転移した患者さんの相談事例では、肝臓、呼吸器、整形外科の専門医に対し、それぞれ個々にセカンド・オピニオンを求めることは無意味です。そのような場合にはまず、主治医である、かかりつけ医に相談することをお勧めします。かかりつけ医は、患者さんの全身状態を把握しており、これまでの経過と全身状態から、適切な、有益なセカンド・オピニオンの求め方を示してくれます。
主治医と良好な信頼関係を保ちつつ、セカンド・オピニオンを参考にして、主体的に、納得のいく医療を受けることができます。