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がんの標準化学療法(2008年1月15日掲載)

内間庸文(浦添総合病院)

外来通院でも治療可能

痛みからの解放が大事

最近「がん対策基本法」や「がんの標準化学療法」「外来化学療法」という言葉をよく見聞きします。

高齢化社会を迎え、二〇〇三年に二百九十八万人だったがん患者は、団塊の世代が六十五歳を超える一五年には五百三十三万人に倍増すると予測されており、「がん二〇一五年問題」といわれています。現在は三人に一人が「がん」により亡くなっている状況ですが、一五年には二人に一人が「がん」で亡くなると予想されています。

〇七年四月、「がん対策基本法」が施行されました。この法律の基本的な考えとしては、がん患者さんが住んでいる地域に関係なく、適切ながん医療が受けられることとあります。

しかし、すべての地域にがんセンターを設立することは困難であると考えられます。そこで、地域の医療機関が診療レベルに応じて機能を分担し、連携を強化することで、質の高いがん医療を適切に提供できる体制を整えることが重要です。

質の高い適切ながん医療とは、診断、手術療法、放射線療法、抗がん剤治療を、がん医療に習熟した医師、専門薬剤師、専門看護師などのチームによって行われる「標準治療」が基本となります。

今回は、抗がん剤治療における「標準治療」を考えてみます。標準治療は、国立がんセンターや海外でも幅広く行われている、当然行われるべき最適な抗がん剤治療のことをいいます。「標準」という言葉を決して「高度ではない治療」と誤解しないでください。標準治療は近年著しく進歩しており、使用する新規抗がん剤も年々増えています。それらの薬剤を適切に使用するには、抗がん剤治療に慣れた医師や、看護師、薬剤師のもとで行うことが何よりも重要です。

抗がん剤治療というと、みなさんは副作用について考えてしまうかもしれません。しかし最近は副作用対策も進んでおり、抗がん剤治療に慣れた医療チームで行えば、必ずしも入院治療ではなく、外来通院で治療を行う「外来化学療法」も可能です。

午前中に抗がん剤治療を済ませ、午後には帰宅ということを、週一回もしくは月一回などの間隔で行います。仕事を継続しながら、または時々旅行に出かけたりしながらの治療が可能です。

さらに、皮下埋め込み型中心静脈リザーバーの使用により、自宅での治療も行います。ほかに、外来治療を行う上で大事なことは痛みからの解放です。早いうちからの痛みのコントロールが重要であり、痛みをとることにより、治療に専念することができます。

がんの治療は早期発見、早期治療が最も望ましく、検診や人間ドックを受診することが大切なのは言うまでもありません。

しかし、進行がんと診断された場合でも手術、放射線療法、抗がん剤治療などの「標準治療」を受けることで効果は期待できます。

抗がん剤治療は、治療効果は少なく副作用が大変とか、長期入院が必要であるというのは、もはや過去の話です。現在は「抗がん剤治療」を「外来化学療法」という形で行うことが可能です。これからは、がん治療を専門とする医療チームと共に二人三脚で治療を行う時代なのです。