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大事故・災害時の医療(2007年12月25日掲載)

平部俊哉(浦添総合病院)

5人で出動のDMAT

不測の事態へ、訓練が重要

みなさんは、大事故・災害と聞いてどう感じますか? 私は、少し前まではテレビや新聞の報道で事故や災害を知っても、遠方の出来事で自分とは直接関係なく、あまり身近に考えていませんでした。

しかし、昨年十二月に日本DMAT隊員養成研修を受け、大事故・災害発生時に待機要請がかかるようになってから、報道があれば関心を持って見るようになりました。また、自分の家庭でも少しずつですが災害時用の物品などを準備するようになりました。

DMAT(Disaster Medical Assistance Team)とは、大事故・災害が発生した際、災害急性期に迅速に被災地へ駆けつけ、救急医療を行うための専門的な訓練を受けた災害派遣医療チームのことです。阪神淡路大震災など過去の災害においては、被災地内で十分な医療が受けられずに死亡した、いわゆる「避けられた災害死」を教訓として国が整備を進めています。

一つのチームは、医師二人、看護師二人、事務連絡調整員一人の計五人で構成されています。基本的には、国・県の要請・招集を受けて出動しますが、自主的に出動する場合もあります。

二〇〇七年十月現在、全国に三百六十九チームが登録されており、沖縄県内では、琉球大学付属病院、浦添総合病院、県立北部病院、県立中部病院、県立南部医療センター・こども医療センターに各一チームずつが存在します。

DMATの主な活動内容としては、(1)被災地内での医療情報収集と伝達(2)災害現場でのトリアージ(傷病程度判断)(3)被災地内の病院における診療の支援(4)近隣・域内搬送におけるヘリ、救急車等内での患者の監視、必要な処置(5)広域搬送拠点臨時医療施設における患者安定化処置、搬送トリアージなど(6)広域搬送での航空機内における患者の監視、必要な処置―などが挙げられます。

八月に起きた那覇空港での中華航空機炎上事故は記憶に新しいと思います。この時、当院のDMATは自主判断で現場へ出動しております。また、病院内では、多数の傷病者の発生を予想し、緊急患者受け入れ態勢をとりました。結局、まもなくして乗客・乗員に死者・重症者なし、数人の軽傷者のみとの連絡が入り、この緊急態勢は解除されましたが、もし、避難が遅れ、多数の傷病者が発生していたら、十分な対応ができていただろうかと不安が残りました。マニュアルの整備、資器材の整備、実践的な訓練の実施など課題が生まれました。

日々の診療は当然大切ですが、不測の事態に備え訓練を怠らないのも重要と感じています。

災害や事故は起こらなければもちろんよいのですが、忘れたころにやってくるものです。万一、起こってしまった場合、大切なご家族を守れるように災害伝言サービスの確認や、近くの緊急避難場所の確認など簡単にできることから準備をしてみてはいかがでしょうか?