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増えているがん(2007年11月27日掲載)

池原康一(中部徳洲会病院)

情報得て自分の体守って

早期発見・治療へ検診を

皆さんもご存じのとおり、がんは増えています。どのくらい増えているかというと、二人に一人は何かしらのがんにかかり、三人に一人は何かしらのがんで亡くなるほどです。

これは決してオーバーに言っているのではありません。がんは生活習慣病と同じぐらい身近な病なのです。

しかし、がんに関して、あまりにも情報が少ないとは思いませんか。例えば、女性が一番かかりやすいがんは乳がんですが、死亡率が高いのは大腸がんです。また男性でも今後大腸がんが死亡率で一番になると予想されています。

これらの事は医療従事者の間では当たり前のことですが、まだ一般市民には広く知られているとは言えません。私が外来で「大腸がんが増えています。大腸カメラを受けませんか」と勧めても、断られることはしばしばです。いや、ほとんどです。

がんは治るのです。治せる時期があると言うのが正しいでしょうか。治せる時期は、早期がんと呼ばれる時期です。この時期に診断し、適切な治療を受ければ、がんは治ります。ですから、がんの事を知っていただくこと、検診していただくことが大切と考えるのです。また、いくつかのがんは原因が解明されており、予防も可能です。

現在、多くのがん種についてガイドライン(標準治療)が推奨されており、専門医は、それを基にがん診療をしています。このことは、患者は、どの病院でもがんに対する標準的な診療を受ける事ができることを示しています。

さらに厚生労働省は、がん対策基本法を制定し、国内どこでもがんに対する標準治療を受けられるよう、法律の下に整備を進めております。患者は安心して治療を受けられる時代になりつつあります。

またセカンドオピニオンという考え方があります。それはいくつかの病院で自分の病気(がん)について診療していただき、自分に適した治療方法を選択できるというものです。

しかし私は、セカンドオピニオンは「病院探し、医者探し」であるとも考えています。通常、がんを治療し始めると五年から十年、通院し経過観察しなければなりません。医師と患者の関係が良いものでなければ、途中で治療を投げ出してしまうかもしれません。がんガイドラインに基づく治療はどこで受けても大差はないと思われます。「自分に合った医師」を探すことが、がん治療では大切です。セカンドオピニオンはその手助けをする一つの手段です。

がん診療は進歩が目覚ましく、医療従事者もそれを勉強し、臨床現場で患者に提供するために必死です。一方で、患者さんも自分のために、がんについて勉強する必要があります。自分の身は自分で守るのです。

そのためにはまず、医療側が市民に対し、がんについて啓発する必要があると考えます。そして、これはそれぞれの医師や病院に任せるだけではなく、県や国のレベルで取り上げるべき問題ではないでしょうか。

長寿県沖縄復活のためにもがんの予防・早期発見・早期治療に努めましょう。まず検診を!