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子宮頸がん(2007年11月6日掲載)

上地秀昭(豊見城中央病院)

未婚未産女性に近年増加

自宅で検診可能、早期発見を

近年、女性の性意識の変化や社会進出により、未婚未産女性の子宮頸(けい)がんが増加しています。

子宮頸がんは0期(上皮内がん)、Ia期(微小浸潤がん)までなら子宮の頸部を円すい形に切り取る円すい切除術で治療でき、その後の妊娠・出産は可能です。しかし、それ以上に進行した場合の手術法として、これまでは広汎子宮全摘術が一般的でした。子宮を全部摘出してしまうので、その後の妊娠・出産が不可能になります。がんだけでなく、出産もできなくなるというショックは計り知れないものがあります。

しかし、欧米では約二十年前から、日本でも七年前から広汎子宮頸部摘出術が行われるようになりました。この手術は、子宮の頸部を広範に切除し、今まで摘出していた子宮体部を温存し、腟(ちつ)と縫合する術式です。再発率は通常の子宮全摘術と変わりません。

術後の妊娠例も報告されており、妊娠希望者の70%が妊娠し、中には複数回妊娠されている方もいます。妊娠を支える子宮頸部がないため、流産・早産の危険性はどうしても高くなりますが、驚くことに、妊娠した方の50%が満期で出産されており、妊娠二十八週以降の早産も含めると、約70%の方が、かわいい赤ちゃんを抱いていらっしゃいます。

ただ手術には、絶対的な不妊の原因(摘出後で卵巣がないなど)がないこと、腫瘍(しゅよう)の大きさが二センチ以下であること、画像上リンパ節転移がないこと、といった条件があります。条件を満たさない場合は残念ですが、通常の広汎子宮全摘術を行うことになります。当院では、現在まで二人の方に広汎子宮頸部摘出術を行いました。二人とも順調に経過し、月経も発来しています。

ここまで子宮を残す話を書きましたが、実際は、手術をしないで済むほうがよりいいことで、手術をするとしても、円すい切除術で済むに越したことはありません。したがって、一番大切なことは子宮がん検診を受けることです。

しかし沖縄県も含め、日本全国の検診率は20%以下で、「仕事が忙しい」「恥ずかしい」などが、未受診の主な理由です。これでは見つかるものも見つけられません。さらに二十代・三十代で最もかかるがんは子宮頸がんで、二十代・三十代のがん死亡者の第二位が子宮頸がんなのです。

そこで、なかなか検診を受けられない方に、病院に申し込み「自宅でできる子宮頸がん検診」を紹介します。通常の子宮頸がん検診は異常な細胞をチェックしますが、この検診では子宮頸がんの原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)の有無をチェックします。この検診による病気の発見率は普通の子宮がん検診と変わりません。診察を受ける苦痛がなく、費用も約五千円と安価なため、病院を受診できない方にはお勧めです。このシステムは全国的にも広まりつつあり、県内でも可能です。しかし、不正出血や、ほかに気になる症状があるときは専門医の診察を受けた方が、より安心できると思います。

子宮頸がんは早期発見できるがんです。検診を受けていなかったために早期発見できず、子どもが産めなくなることを思えば、自宅での検診は受ける価値が大いにあると思います。