最近、メタボリック症候群が注目されています。いわゆる運動不足や過食、過度の飲酒、喫煙などにより肥満をきたし、体内の変化として高血圧、高脂血症(最近では脂質異常症といわれています)、高尿酸血症、糖尿病などに陥り、特に血管に関連した病気を引き起こしやすくなります。
また、肥満が悪化すれば内臓脂肪が増えることになり脂肪細胞の増加、肥大により、人体にとって厄介な物質である“アディポサイトカイン”が増加し、血糖値を下げる働きのあるホルモン“インスリン”の効果が十分に発揮されなくなります。このように、体にとってはマイナスの連鎖反応により糖尿病が悪化したり、心臓血管系の病気にかかりやすくなり、“メタボリック・ドミノ”とも呼ばれています。
脳梗塞(こうそく)や、くも膜下出血も含めた脳出血は、脳を取り巻く血管にかかわる病気であり、当院の統計では、この三年間で、病気にかかる年齢層が大幅に低下しています。具体的に言うと、六十五歳以上の高齢者は減少し、五十歳以下の中年層での発症が目立ちます。
私はリハビリ専門の病院に勤務しており、このような脳梗塞、脳出血後の手足のまひや嚥下(えんげ)障害、言葉の障害の回復を支援する立場にあります。特に、年齢の若い患者さんは、身体的な苦痛はもちろんのこと、急な発病による失職、経済面での不安、精神的な落ち込みが強く、ご家族や職場の方々含めてのトータルサポートが必要となってきます。
大体の目安として、病気になってから約三カ月が、最も回復する時期です。入院三カ月目に、自分で歩行し、身の回りのことをできるまで回復(自立)され、自宅退院される方は約三割、車いすで移動され、介助を受けながら生活される方が四割くらいです。残りの三割の方は寝たきりの生活で全面介助が必要になってきます。
そこで問題となるのは退院後の支援の仕方ですが、自宅退院された方以外は、生活の場が、身体障害者施設や授産施設を含めた施設、あるいは療養型病院になることがほとんどです。しかしこれらの受け入れ側は余裕がない状況です。また、国の案による療養型病床の削減で、困難な状況は、さらに深刻なものになりそうです。
このたび厚生労働省より医療機関へ「病気の予防を重点的に」との通達がきました。ジョギングやジム通いなど、健康に対しての意識は明らかに変わってきていますし、受動喫煙防止条例や地域ぐるみの環境対策もあって、喫煙率も年々下がっています。このような健康ブームに、国はもとより地域ぐるみでの前向きな支援を切に望みます。
冒頭に述べたメタボリック症候群は、生活習慣の改善、本人の意欲でかなりのレベルまで改善します。
先月、車に頼らない暮らしを考えるイベント「カーフリー宣言」が那覇市で開催されました。歩くことも重要ですが、これからは、環境問題にも配慮した健康づくりが大切となってくるのではないでしょうか?