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統合失調症の薬物療法(2007年10月23日掲載)

道下聡(新垣病院)

副作用減り新たな効果も

予防には根気強く続けて

「統合失調症」という病気について、ご存じでしょうか? 統合失調症とは、五年ほど前までは「精神分裂病」といわれていた病気で、約百人に一人の割合でかかる病気です。ちなみに、人工透析を受けている方は約五百人に一人の割合ですので、それに比べると、あまり珍しい病気ではないといえるでしょう。

この病気にかかると、幻聴や被害妄想などの症状が見られるようになります。ないはずの物音や声が聞こえたり、誰かに狙われていると信じ込んでおびえてしまったりするわけです。また、感情が不安定になったり、考えがまとまらなくなったりもします。長い間治療を受けずにこじらせてしまうと、徐々に意欲や関心が失われ、引きこもり状態になってしまうこともあります。

近年、この病気の原因について、さまざまな方面から研究が進んできました。その結果、現在では、脳の中で化学物質のバランスが崩れることで、病気が起きると考えられています。

脳内の神経は複雑な情報システムを形作っており、情報の伝達は電気信号と化学物質によって行われています。ところが、化学物質のバランスが崩れると情報システムが誤作動し、幻聴や被害妄想を引き起こしてしまうのです。これを防ぐために、統合失調症の治療には、化学物質のバランスを整える薬(抗精神病薬)が用いられます。

この薬も、ここ十年ほどで目覚ましい進歩を遂げ、次々と良いものが開発されてきました。以前は、抗精神病薬には、手の震えや体のこわばりなどのパーキンソン症状と呼ばれる症状や、眠気・だるさなどの副作用がつきものでした。ところが、新しい抗精神病薬では、副作用もずいぶん少なくなりました。また、従来の薬では効きにくかった、引きこもり状態のような症状にも、効果が見られるようになってきています。

統合失調症の方は、薬でバランスを取り戻せば、通常の生活を支障なく送れるようになります。しかし、残念ながら、バランスを崩しやすい体質であることは変わりませんので、勝手に薬を減らしたり中止したりすると、再度バランスを崩してしまい、前に述べたような症状が再び起こってくるわけです。ですから、症状がなくなっても再発予防のために、薬物治療は根気強く続けていくことが必要です。

どんなに良い薬でも、副作用があると飲み続けるのはイヤなものです。しかし逆に考えると、副作用の、より少ない薬が開発されてきたということは、以前よりも薬を飲み続けやすくなったともいえるでしょう。

「調子が良くないな」と思っても、こころの病気の場合、受診するのに多少ためらいを感じるものかもしれません。ですが、他の病気と同じく、早めに受診すれば、それだけ早く良くなるものです。統合失調症は、よくなる(よくかかる)病気ですが、(治療すれば)よくなる病気ですので、あまり気負わずに、医療機関に相談してみてください。