皆さんは、「スポーツ」の語源を知っていますか?
ラテン語のdesportare「物を別の場所に運び去る」、転じて「憂いを持ち去る」という語感から、古代フランス語のdesport「気晴らしをする、遊ぶ、楽しむ」を経て今のsportに至ったと考えられています。つまりスポーツとは気分転換のための「遊び」なのです。
近年、スポーツの発展は目覚ましく、スポーツ人口は急増し、スポーツも多様化してきています。スポーツ界にも「科学」が導入され、ウエアやシューズだけでなくトレーニング方法、栄養・サプリメントに至るまで、最先端の科学的知識が用いられています。しかし、小中高校のクラブ活動では、いまだに精神論が重視され、毎日何時間も練習すれば強くなるという迷信が強いようです。そのため、学生時代に活躍した選手がスポーツ障害に苦しみ、リタイアするケースも少なくないのです。
もうひとつ、日本のスポーツ指導の特徴は、小さいころから特定の競技だけをさせることです。からだを動かす能力は、発達に応じて伸びていくものですから、特定のスポーツだけをさせると、発達の偏りを生じ、スポーツ障害の原因ともなります。
このようなスポーツ障害を予防するためには、まず子どものからだと成長・発達の特徴を理解することが重要です。大人と比べて子どものからだは、(1)骨・筋力が弱い(2)関節が柔らかい(3)関節軟骨が厚い(4)成長軟骨(骨端線)がある(5)骨と筋肉の伸びのアンバランス―などの特徴があります。そのため、過度の運動負荷によって、骨や関節に障害を起こしやすく、正常な成長過程が阻害されて痛みを生じ、将来、変形を引き起こす可能性があります。
次に、子どもは図のように種々の器官が異なった発達パターンを示しますので、年齢に応じたスポーツ指導が大切です。小学生の年代は脳・神経系の発達が早いので、スポーツに必要な基本動作(走る、跳ぶ、投げる、打つ、ける、泳ぐ、滑る)を幼児期から小学校低学年で行うことが大切です。またスポーツの楽しさを教えながら、いろいろな種目をやらせましょう。「好きにやらせて細かい指導はしないこと」。その中で自然に基本的な動作が身についていきます。
小学校高学年から中学生の年代にかけては呼吸循環系が発達しますので持久力をつけるのに、最も良い時期です。徐々に長距離走や長い時間運動を続けてみます。この時期の筋力トレーニングはまだ骨が弱いので、体重を利用した腕立て伏せや懸垂、また軽いダンベルやゴムチューブを用いた方法が望ましいでしょう。
高校生の年代では筋肉系が発達します。骨の発育も完了しますので、骨を強くする意味においても重い負荷での筋力強化に適しています。
一方では、運動をしない子どもが増えてきており、子どもの体力低下や肥満が大きな問題になってきています。一人でも多くの子どもたちがスポーツに参加し、障害を起こすことなくスポーツを楽しんでもらいたいと思います。