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健康のベクトル(2007年8月7日掲載)

比嘉啓(首里城下町クリニック)

トータルでいい方向に

根拠ない自信、後回しは禁物

メタボリックシンドローム、喫煙や飲酒の害、運動の必要性等々、日常生活で身近な健康情報が多く取り上げられ、新聞などで健康に関する記事を読んでいれば、大抵のことは把握できるようになっています。インターネットをされている方は「健康ネット」等のサイトで気軽に健康情報を手に入れることができます。具体的情報についてはそういった記載を参考にして頂くとして、本日は実行に移すこつみたいなものを述べたいと思います。

日々の診療で患者さんに運動・禁煙・節酒・食生活などの状況を尋ねてみると、その大切さはほとんどの方が知っているようですが、実際、改善行動に移せない状況が多く見られます。また、複数の改善すべき点をお持ちの患者さん、例えば喫煙の習慣がある多忙な中高年男性で、仕事の付き合いでほとんど毎日飲酒・外食し、運動する暇もない方などは、自分では何から手をつけていいものかわからないし、今は具合も悪くないので生活習慣を改めるのは後回しということもよくあります。しかし、本当にそれでいいのでしょうか?

そんなとき、まずは自分を冷静に見つめなおすことから始めましょう。日々を幸せに過ごすための一番の条件は、健康を保つことです。まず最初に、自分の生活習慣で現在の健康面を考えるとマイナスと思われる事象―肥満・飲酒・喫煙・運動不足・多忙など―を挙げてみましょう。次に改善すべき優先順位を決め、プランを立てましょう(この作業には、医療機関などで専門家の助言が必要な場合もあります)。

その際の一つ目のこつは「完ぺきを求める」のではなく、「逃げ道」を作っておくことだと思います。禁煙したら食欲が増して太るからと言い訳をする患者さんがいますが、まずはそれでいいのです。優先順位は禁煙です。ただし食欲が増したら、なるべく体に良いものを食べましょう。禁煙で二歩前進、体重増加で一歩後退、合計一歩前進と考えましょう。健康のベクトルがいい方向に向かっていれば、そのまま継続し、目標を達成できていれば新たなステップに取り掛かればいいのです。悪い方向に向かっていれば、もう一度決意を新たにして頑張ればいいのです。

ただし、現実をごまかしてはいけません。若いころやせていた人、スポーツ歴があり体力に自信があった人などは、なかなか現実を受け入れず「やろうと思えばいつでもできる。自分は大丈夫」といった根拠のない自信をお持ちの方も少なくありません。また、多忙を理由に後回しにするのもよくあることですが、いけません。現実を見つめましょう。

こつの二つ目として、仲間をつくることをお勧めします。恥ずかしいからといって一人で内証で行動するよりも、家族・職場など身近な人たちに、プラン(例えば減量や禁煙)を宣言しましょう。自分自身にプレッシャーをかけるとともに、応援してくれる仲間の存在は、一人では甘えてしまいがちな状況を大きく改善してくれます。目的は、より健康的な状況に自分を導くことなのです。さあ、少しでも健康のベクトルがいい方向に向くように、早速行動してみましょう。