ペットブームで、テレビでもペットを扱う番組が多く放送されていますが、実は人間は大昔から動物たちと暮らしてきました。
古くは石器時代に、石器人が犬とともに生活した痕跡が残っています。古代エジプト時代の猫ミイラも発見されているそうです。
長い歴史の中で、動物たちは人間の身近なパートナーとしての地位を築いてきました。ペットを飼い育てることは、心に大きなやすらぎをもたらします。
医学的にも「ペット・テラピー」という言葉があるように、その効用が注目されています。一例を挙げれば、長期療養施設でペット・テラピーを行うと、活動を活性化させ、生活の質(Quality of Life)を改善するとの報告があります。
最近の特徴として、珍しい動物や爬虫(はちゅう)類を飼う方も増え、ペットの対象が広がってきています。この現象は、インターネット等を介して、世界中の多様な情報が簡単に得られるようになったことと無縁ではないようです。
その一方で、人と動物の両方に感染する病原体による「人獣共通感染症」が、世界中で大きな問題になってきています。
これは、もともと動物に感染していた病原体が、何かの拍子に人間に感染し、新たな病気を起こしてしまう感染症を指しています。最近、発見された新しい感染症のほとんどは人獣共通感染症です。
日本の感染症対策の根幹をなす感染症予防法が一九九九年に施行されましたが、その後、数回の改正が行われ、「人獣共通感染症」対策が強化されています。すなわち、感染症対策は人間だけを対策しても不十分だということが分かってきたのです。
特に、輸入の際、動物の体に潜んだ感染症が、国内に入り込むのを水際で防ぐことが最も重要だと考えられ、検疫が強化されています。
例えば、北米から輸入されていたプレーリードッグは野兎(やと)病とよばれる感染症を媒介することが報告され、ペストを媒介する恐れもあるため、二〇〇三年に輸入禁止となりました。
珍しい動物を飼いたいときにはその安全性と入手方法にも十分に注意する必要があります。
また、〇六年には、フィリピンで狂犬病ウイルスに感染し、二人の方が亡くなられました。海外では狂犬病ウイルスがいろいろな哺乳(ほにゅう)類に潜んでいる可能性があります。さらに、いったん発症すれば特異的治療法がないため、海外、特に東南アジアでは、狂犬病が疑われるイヌ、ネコおよび野生動物に近づかないことが大事です。万が一、かまれたり、ひっかかれたりした場合は、まず傷口をせっけんと水でよく洗い流し、ただちに医療機関を受診し、発病予防処置を受ける必要があります。
一九五七年以降、日本国内での狂犬病感染例はありませんが、油断してはいけません。日本での飼い犬への狂犬病ワクチン接種率が低下しているそうです。
飼い犬に狂犬病ワクチンを予防接種するのは飼い主の義務です。これからも、人間とペットとのよい関係を続けていくためには、ペットの健康管理も大事というわけですね。