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心臓の新しい画像検査(2007年7月17日掲載)

嘉数朗(豊見城中央病院)

詳細さと安全性を両立

入院いらず容易に受診

近年、急性心筋梗塞(こうそく)に対する治療が進歩していますが、東京都CCUネットワークの解析によると、急性心筋梗塞の院内死亡率は10%近くもあり、今だ危険な疾患であることに変わりはありません。

急性心筋梗塞や狭心症など、いわゆる虚血性心疾患の危険因子として(1)高脂血症(2)糖尿病(3)たばこ(4)肥満―などが指摘されています。

糖尿病と高脂血症はともに重要な危険因子ですが、糖尿病におけるインスリン不足が脂質代謝に影響するため、両者は合併しやすいと言われています。

糖尿病に合併する動脈硬化症の頻度は非糖尿病患者の二―三倍といわれ、軽症糖尿病でも動脈硬化症を発症するといわれています。糖尿病患者の特徴として、自覚症状以上に病態が重篤なことが多く、「無症候性心筋梗塞」として知られています。

最近、メタボリックシンドロームという言葉をよく耳にしますが、日本の診断基準ではウエスト周囲径が男性八五センチ以上、女性九〇センチ以上が必須項目とされ、それ以外に(1)脂質代謝異常(中性脂肪―一五〇mg/dl以上、HDLコレステロール―四〇mg/dl以下)(2)高血圧(収縮期血圧―一三〇mmHg以上、拡張期血圧―八五mmHg以上)(3)耐糖能異常(空腹時血糖―一一〇mg/dl以上)―のうち二項目以上の該当で診断されます。

診断基準の中心となっている内臓脂肪蓄積型肥満は、インスリン抵抗性、炎症、酸化ストレスなどさまざまな病態と関係しています。これら危険因子の重積は狭心症や心筋梗塞を発症しやすい、不安定な動脈硬化病変を作りやすいと言われています。

虚血性心疾患の危険因子を持っている方の場合、狭心症や心筋梗塞の発症前に、早期発見し治療することが非常に大事だと考えられます。

心筋梗塞や狭心症などの検査法として知られる心臓カテーテル検査は、入院が必要であることや血管に直接カテーテルを挿入するという侵襲的検査であるため、誰でも簡単に選択できる検査ではありません。

しかし最近、MDCT(マルチスライスCT)や3D―MRA(三次元磁気共鳴血管画像)など、外来で、比較的容易に受けられる検査が出現し、全国の病院に広まりつつあります。

MDCT 64列MDCTは、従来と比較しても詳細な冠動脈画像を得ることができ、心臓カテーテル検査に近い診断能力を持ちつつあります。近い将来、心臓カテーテル検査のほとんどはMDCTに置き換わるのではと言われるほどです。

3D―MRA 冠動脈MRAはCTと比較して、放射線被ばくが全く無く、造影剤も必要としないため腎機能障害のある方でも安全に検査することができます。3D―MRAによる冠動脈近位部の狭窄(きょうさく)診断能力の精度はかなり上がってきています。

糖尿病や高脂血症、メタボリックシンドロームなどを指摘されている方は少なくないと思います。その中で狭心症などの虚血性心疾患を心配しているけれど、心臓カテーテル検査や入院に抵抗のある方は、一度このような心臓精査を受けることをお勧めします。