皆さんは胆石症という病名を聞いたことがありますか?
これは胆嚢(たんのう)結石(胆嚢にできた結石)・総胆管結石(総胆管にできた結石)・肝内結石(肝内胆管にできた結石)の総称であり、厳密には結石のできる部位によって名称は変わってきます。多くは胆嚢結石症の事を指します。
通常、肝臓で産生された胆汁は、胆嚢で濃縮され総胆管・十二指腸乳頭を通り、十二指腸内に流れていきます。結石は、この通り道のどこにもできます。
胆嚢結石の40%は無症状なのに対して、総胆管結石は急性胆管炎を併発し、意識障害やショック状態まで引き起こしてしまう事のある恐ろしい結石です。
痛みなど症状を伴う胆嚢結石は開腹手術や腹腔(ふくくう)鏡下手術で治療されます。総胆管結石や閉塞(へいそく)性黄疸(おうだん)(がんや結石が胆道を閉塞し黄疸を来す状態)の診断・治療に登場するのがERCP(Endoscopic Retrograde Cholangio Pancreatography=内視鏡的逆行性膵(すい)胆管造影)です。
内視鏡を十二指腸まで挿入し、胆管開口部である十二指腸乳頭から逆行性に造影チューブを挿入し総胆管・膵管を造影し情報を得ることをERCPといい、これに引き続いて処置を行うこともできます。
十二指腸乳頭を切開や拡張後、総胆管結石をバスケットで排石したり、バルーン(風船)でかき出します。大きな結石は砕いて取り出すこともできます。この応用でチューブ製や金属製で筒状のステントを挿入・留置しバイパス・減黄(黄疸を軽減する)を図ったり、超音波や、更に細い内視鏡を挿入することで、より精密な情報を得ることもできます。
このような処置は、以前は開腹手術でしか行えませんでしたが、近年内視鏡処置具の目覚ましい開発・進歩によりERCP下で行えるようになってきています。開腹手術を行わず、ERCP処置や腹腔鏡下手術を併用することにより、体に負担の少ない処置を行うこともできるようになってきました。
有益なことだけではなく、膵炎や出血、穿孔(せんこう)といった合併症があるのも事実ですが、こうした合併症対策も進んできています。
当院でも、このERCP処置を積極的に導入しています。胃カメラ(上部消化管内視鏡)に比べ、苦痛を伴うという欠点に対しては、麻酔法を工夫し、安全に、しかも苦痛を少なくする処置を心がけています。
しかし、このERCP処置は万能ではなく、結石の場所や数、大きさ、条件によっては行えないこともありますので専門医とよく相談してください。
近年、大きな開腹を行わない微小手術が盛んに言われてますが、この分野でもERCP処置を併用することにより、体に負担の少ない処置・治療が一般化してきています。胆石・総胆管結石・閉塞性黄疸といわれたらERCPを考えてみてください。