みなさん、ひざの痛みで悩んでいませんか? 動かすときに痛くて曲げ伸ばしに制限があったり、体重がかかると痛くて、歩くのがおっくうになったり、ひざのはれやO脚がだんだんひどくなっていませんか?
これらの症状の多くは、ひざの軟骨がすり減ったことが原因になっています。ひざは人間の関節の中でいちばん大きいのですが、軟骨は体重を支えて歩くときのクッションであり、なめらかな動きを行うための潤滑剤の役割も果たしています。しかし、この大事な軟骨も年齢とともにすり減り、いったんすり減った軟骨を元に戻す方法は残念ながらまだ見つかっていません。そこで現在われわれは、軟骨がすり減るスピードを少しでも遅らせるために、投薬やリハビリ(ダイエットや筋力訓練など)、装具装着や注射などを行っています。しかし、こういった治療を行っても軟骨が完全にすり減って関節の痛みや動きが悪くなった場合、人工の関節に置き換える手術が必要になります。
さて、この人工関節置換術は、肩、ひじ、また、ひざ、足、最近では指などいろんな関節に使用していますが、ひざの人工関節は一八九〇年の報告から始まり、改良を重ねてきております。約十五年前の人工ひざ関節と現在のそれを比較した場合、大きな違いが(1)人工関節の耐久性(2)ひざの動きの制限―の二つです。
耐久性については、約十五年前のタイプは平均十年しかもたないといわれていましたが、現在の人工ひざ関節は材質やデザインの工夫などで、二十年から三十年もつといわれています(個人差があります)。
次にひざの動きの制限ですが、約十五年前のタイプではひざはだいたい直角(九○度)までしか曲がりませんでしたが、現在はデザインの工夫で正座に近いところまで曲げることが可能になっています。
もちろん、誰でもできる手術ではなく、骨の削り方や、筋肉、靱帯(じんたい)のはがし方、人工関節の設置方法など複雑な操作が必要で、経験豊富な熟練した医師が行う必要があります。そのほかに術後のリハビリも大事で、不十分なリハビリでは痛みや動きが悪いまま残ってしまいます。
さらに、最小侵襲手術法として手術器具の改良で筋肉や皮膚の切開を最小限に抑える方法が考案されています。脂肪の多い人や筋肉質の人、変形の強い人などにはできない場合もありますが、従来の手術法では切開する皮膚の長さが約十五センチだったのが、この方法を用いるとさらに小さい傷で行えます。
このようにひざの人工関節置換術は耐久性や動きの自由度が向上し、傷も小さくなってきています。手術後、海外旅行やゴルフ、畑仕事などを楽しんだり、いろいろな趣味を満喫している人が大勢います。もちろん手術にともなう問題点、リスク、合併症はあり、一番大きなものに感染があります(ばい菌が入ることでひざを洗う処置を行いますが、治まらなければ入れた人工関節を抜かなければならない場合もあります)。
ひざの状態は人それぞれ異なるので100%の保証はできませんが、ひざの痛みで悩んでいる方は、お近くの整形外科にご相談ください。