喜怒哀楽つまり感情(こころ)と健康(からだ)の関係について話をしたいと思います。「病は気から」「ストレスは万病の元」という言葉があるように、われわれの健康状態および病気は、感情、こころ、精神状態と密接に関連しています。
怒り 怒りとはどういった感情でしょうか。何らかの不平不満に対する反応といわれますが、怒りを感じるとき、人間の体にはどういった変化が起こるのでしょうか。怒りを感じると、交感神経が興奮状態となり血圧が上昇します。脈も速くなり、瞳孔が大きく開きます。すべて交感神経の働きですが、これにより高血圧を悪化させ、動脈硬化がある方の場合は、脳卒中を起こしたり、心筋梗塞(こうそく)を起こしたりします。また、怒りをぶつけられた相手は過度のストレスを感じます。皆さんよくご存じのように、過度のストレスは胃かいようを引き起こしたり、うつ病などを引き起こしたりします。免疫力も低下させるのではないかといわれ、いずれにせよ体にとっていいものではありません。怒りは自分にとっても周りの人にとっても健康に良くないものといえます。
悲しみ 悲しみとは愛情、友情、共栄の対象が失われたときにみられる感情とされています。脱力感、失望感や挫折感を伴い、胸が締め付けられるといった身体症状と共に、涙を流す、表情がこわばる、意欲・運動力の低下などがみられます。しかし、この感情は現実を克服するために必要なものとされており、この感情をきちんと受け止め、十分経験しないと、うつ病、ひきこもり、多幸症といった感情の病気になるといわれています。家族を亡くしたときなどに「喪に服す」といいますが、それがちょうど悲しみを消化する期間と考えられます。こう考えると体にとって必要なものといえるかもしれません。悲恋や、登場人物が死んでしまう悲しい映画などをみて、思いっきり泣いた後は不思議とすっきりした気分になることがあると思います。あまりありがたいものではないですが、健康に悪いものでもなさそうです。
笑い 笑いは自律神経の頻繁な切り替えを起こします。このとき、副交感神経が優位の状態になるとされています。副交感神経は、安らぎ・安心感を感じるときに働く神経で、副交感神経が働くとストレスが解消されます。また、自律神経の頻繁な切り替えによる脳への刺激により、神経ペプチド(免疫機能活性化ホルモン)が全身に分泌されます。他にもNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が活性化しがんの予防と治療に効果があります。さらに、糖尿病の治療にも有効との研究もあります。その上、体内で鎮痛作用たんぱくの分泌を促進させ、ストレスが下がることにより血圧を下げ、血液中の酸素量を増やし、心臓によい影響を与えることから、心臓病の治療に用いられることもあります。このように笑いは体にとって相当いいものです。
みなさん毎日笑って楽しく過ごし健康の維持・増進に努めましょう。