肝臓が悪いというと一般にアルコールを連想します。肝機能異常者は、男性が女性の二倍以上おり、多くは飲酒が関連しています。酒を飲んで肝臓が悪くなる場合、特にγ―GTPという肝機能検査の数値が高くなりますが、酒をほとんど飲まないのにこれが高い人がいます。γ―GTPは胆道系酵素とも呼ばれており、酒を飲まなくても肝臓の中で胆汁の流れが悪くなると上昇します。胆汁というのは肝臓で作られる脂肪を溶かす消化酵素で、胆管という管を通って十二指腸に分泌されます。
肝臓の中の胆管に慢性の炎症が起こる病気があり、PBCと呼ばれています。PBCというのは、Primary Biliary Cirrhosisの略語で、日本語では原発性胆汁性肝硬変と言います。非常に難しい病名なのでPBCと覚える方がよいでしょう。この病気は女性に多く、患者の九割を占めます。また、四十歳以上で発病することが多いため、全患者の約八割は中年以降の女性です。
PBCの原因はよく分かっていません。女性に多いぼうこう炎が関連しているという説もありますが、確かな証拠はありません。PBCの病気の程度はさまざまで、軽度の胆管炎から肝硬変にいたる重いものまであります。病気の初期段階では症状がなく、進行するとだるさや全身のかゆみを訴えるようになります。肝機能検査では先に述べたγ―GTPが高くなります(65以上)が、そのほかに、アルカリフォスファターゼやGPTといった検査値が異常を示すことも多いです。これらの検査値に異常があれば、一度は病院で診てもらって下さい。
大切なことは、病気を早期に発見して、治療することです。程度の軽いうちに治療を受ければ、肝硬変まで進行することは、まれですが、症状がないからといってほっておくと徐々に病気が進行します。肝硬変になるとだるさやかゆみに加えて、黄疸(おうだん)が出たり、おなかに水がたまったりという症状に悩まされることになり、肝臓を移植しないと治らない人もいます。
PBCはこれまでまれな病気と考えられていました。厚生労働省が難病に指定している病気で、沖縄県ではこれまでに百七十九人が登録されていますが、これは症状のあるPBCを対象にしており、実際は症状の無いPBCがその倍以上存在するといわれています。
そこで、PBCが実際どれくらいいるのか人間ドック受診者を対象に調査してみました。詳しい調査の方法は専門的になりますので省きますが、PBCは四十歳以上の女性の約0・3%に存在することがわかりました。千人のうちの三人というのは、決してまれな病気ではないということになります。ですから、四十歳以上の女性で、γ―GTPが高いと言われた人は一度専門医を受診してPBCという病気がないか調べてみるとよいと思います。実際に検診をきっかけに発見されることが多い病気です。