沖縄県医師会 > 健康の話 > うちなー健康歳時記 > うちなー健康歳時記2007年掲載分 > 子どもの救急受診

子どもの救急受診(2007年5月15日掲載)

宮城 裕之(沖縄赤十字病院)

冷静な状況観察が大事

3カ月未満の発熱は来院を

医療現場での救急患者をみると、内科、外科疾患を含めて全体の過半数は子どもの病気ですが、重症で入院が必要となるのは一割前後であり、大部分は入院せず帰宅しています。もちろん、嘔吐(おうと)や脱水があれば点滴するし、ぜんそく発作は吸入療法など救急で処置をしたのでよくなったということもあり、症状に応じて救急を受診することは必要です。

しかし、救急に行っても長時間待たされた、小児科専門医でない医師や若い医師に診察され不安になった、診察料が高い、ほかの患者から別の病気をもらう心配があることなどを考えると、むしろ救急受診を控えてもいい場合もあります。

ここで、救急で一番多い症状である熱について考えてみましょう。昼間は元気でも夜になって急に熱がでるということはよくあることですが、熱があっても機嫌がよく食欲もあればまず心配ありませんので熱さましなど常備薬で様子をみていいでしょう。周りにインフルエンザが流行していても慌てて救急を受診する必要はなく、解熱剤を使い、水分を取って安静にして、翌日かかりつけ医を受診しはっきり診断してもらえばいいのです。しかし、熱が長く続いていたり、食欲がない、呼吸が苦しそうなどの症状があれば、一刻も早く救急を受診する必要があります。また、三カ月未満の赤ちゃんは症状の進行が早く、重い病気が隠されていることがあるので、熱だけだとはいっても救急を受診した方がいいでしょう。その際にも、よく観察すると普段とどこか違って何か変だということが感じられるものです。

次にけいれん発作ですが、初めて経験する親の気持ちも分かりますが、意外と心配する必要は少ないものです。大部分は熱性けいれんであり、数分でおさまって後遺症もほとんど来さないものが多いのです。救急車を呼んだ時や病院に着いた時にはおさまっていることが多く、何度か経験した親であればその対処(主にけいれん止めの坐薬(ざやく)を使う)も冷静にできると思います。

最近は、インターネットも普及しており、小児科学会でも夜間や診療時間外に受診する目安を提供していますので参考にしてください。こどもの救急(http://www.kodomo―qq.jp/)。

小児救急が本当に救急かということを考えると、確かに子どもの病気は急変することが多く、緊急を要することもあります。しかし中には、自宅での対応で十分落ち着くこともあるので慌てず騒がず子どもの状態をよく観察することが大事です。普段のお子さんの状態をよく把握しておき、何か変だと思ったら救急を受診するが、熱、せきや下痢などがあっても元気で機嫌もいいようであれば、救急を受診するよりは自宅で対症療法することが重要です。そのことがお子さんにとっても負担が少なく、われわれ小児科医にとっても本当の意味での救急患者、重症患者の診察に専念でき、小児医療の充実が計れるものと思います。(小児科)