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健康自主管理のすすめ(2007年5月8日掲載)

仲地 廣順(南部徳洲会病院)

定期的医療検査の受診を

HP通じ自らに必要な情報入手

わが国は、戦後六十年余の間に国民の絶え間ない努力と勤勉によって、奇跡的な経済発展を遂げ、経済力の指標である国内総生産(GDP)は、米国に次いで世界第二位の経済大国となり、さらに二〇〇五年には、平均寿命が男性七八・五六歳(世界第四位)、女性八五・五二歳(世界第一位)となり、世界有数の長寿国となっています。

しかし、現在のわが国の医療に視点を移すと、新聞・雑誌・テレビなどのマスメディアで絶えず報道されているように、がん・高血圧・糖尿病などの生活習慣病の罹患(りかん)者数が毎年右肩上がりに増加しています。さらに人口動態を見ると、少子化と高齢化が同時に、しかも急速に進行しています。医療費の増加、年金財源などともからんだ、これらの問題に対し、国の政策でもビジョンが描けておらず、多くの国民は将来に対して大きな不安を抱いています。

さて、最近の生命科学の研究によれば、人間の寿命は大体百二十歳から百三十歳であろうと説明しています。人間の体は約六十兆個の細胞からなり、人の寿命はこれらの細胞における何千種類もの化学反応(代謝)が昼夜を違(たが)わず正確に進行することにより維持されています。わたしたちの体の老化現象は、身体の細胞の分裂が停止したり、数が減少することにより進行するものと考えられています。一方、わたしたちが生活している環境を見ると、各国の利害関係が複雑に絡んだ温暖化による地球環境の悪化が、巨視的には異常気象をもたらし、微視的には活性酸素などの環境因子が人間の老化を促進させるとの指摘もなされています。

人間は誰でも健康長寿で高いQOL(生活の質)を求めています。しかしわたしたちは、自分の体で営まれている複雑な生命現象はもちろんのこと、体内で生じているであろう異常、すなわち中国医学で言われている「未病」の間は全くと言っていいほど自覚せず、自分は健康であると信じて日常生活を過ごしています。そこで、自覚の域値に達していない体内の異常を早期発見・早期治療するために、わたしたちは定期的にしかるべき医療機関で検査を試みる必要があります。

情報技術(IT)が普及している現在、各医療機関およびそこに所属している医師は、自分の専門分野とか、診療実績などをホームページに掲載しています。これらにアクセスすることにより、自分の健康管理に必要な情報を容易に入手することができる状況になっています。

日ごろから、健康長寿を目指すためには、二十四時間自由に吸っている空気と同様に健康は無償で保証されているとの錯覚に陥らずに、いま一度、自分の体の細胞で営まれている生命現象を認識することが肝要です。健康に関する積極的な管理、すなわち「健康自主管理」が、科学技術の進歩した二十一世紀に生きているわたくしたち各自に求められていると思います。