おばあ「チンシ(ひざ)が痛いといったのに、トゥムグゥー(股(こ)関節)のグゥスミチ(軟骨)がすり減ってるって言われたさぁー」
娘「小学一年生の息子の○男もひざの痛みが治っても足をひきずるから、病院に行ったら、股関節の病気かもって言われたよ。○男はあぐらができなかったけど、おばあはヒサマンチュー(正座)はできたよね…」
もしかしたら、おばあは変形性股関節症、○男君はペルテス病かもしれません。外来では、股関節以外の症状で来院される患者さんもまれではありません。この機会に、股関節の病気について述べたいと思います。
股関節の病気は赤ちゃんから高齢者までと幅広く、通院治療も長期にわたり、長いおつきあいになります。股関節の病気をざっと挙げてみます。
先天性股関節脱臼 おむつを換える時にまたが開きにくい、脚の長さが違う、歩くとき足を引きずる、向き癖がある、などの症状がみられます。
数年前から街中で帯状の布で小さく丸まって抱っこされている赤ちゃんを見かけます。まだ両脚が開いた状態の方が股関節の発育にはよいと思います。
ちょっと気になります。
乳児化膿(かのう)性股関節炎 高熱の原因がわからない。脚を動かさない。おむつを換える時に泣くなどの症状があり、緊急に治療が必要な病気です。
単純性股関節炎 多くは風邪や咽頭(いんとう)炎などの後に急な股関節痛が起こり、一―二週間で症状が軽快します。次に挙げるペルテス病との鑑別が必要です。
ペルテス病 太ももやひざの痛みがあり、痛みが取れた後も長く足を引きずることが続いたり、太ももが細くなったりします。長い治療期間が必要です。
大腿(だいたい)骨頭辷(すべ)り症 欧米に多くみられましたが、近年日本でも増えてきています。肥満傾向の子供さんに多いといわれています。
臼蓋(きゅうがい)形成不全 股関節の屋根の形が生まれつき急傾斜になっています。偶然発見されたり、就労や妊娠・出産を契機に徐々に痛みがでてくることで見つかることが多いです。
大腿骨頭壊死(えし)症 薬の副作用であったり、大量の飲酒歴があったり、外傷、潜函(せんかん)病などが原因となります。若年者でも手術が必要となることが多いです。
変形性股関節症 股関節の軟骨がすり減った状態です。痛みがあったり、関節の動きが制限されたりします。レントゲンでは股関節の変形を認めます。
これまでに挙げた病気が悪化すると、最終的に変形性股関節症になります。変形性股関節症にならないように、各年齢に応じた適切な治療を行う必要があります。このほか、お年寄りが転んだときに起こる大腿骨近位部骨折が沖縄では数多くみられます。
横座りやあぐらがきつくなってきた、靴下や足のつめ切りがやりにくくなった、和式のトイレに入れなくなった、足を引きずることが続いている、腰痛、ひざ痛が、なかなかよくならない、などの症状がありましたら、専門医の診察を受けてみてはいかがでしょうか。