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在宅医療(2007年2月6日掲載)

玉城 修(玉城ファミリークリニック)

「帰りたい」を受け止める

「居室」「人」「経済」が必要条件

二〇〇六年四月の診療報酬改訂で、在宅医療の保険点数が上がり、さらに十月の改訂で、七十歳以上七十五歳未満の高齢者で、現役並みに収入がある人の負担率が二割から三割になりました。〇八年には一般の七十歳以上の人も、現在の一割負担が二割負担になり、一一年には療養型施設も廃止の方向です。今回は、在宅医療の現状についてお話ししたいと思います。

在宅医療の特徴として、まず自由だということです。好きなときにテレビやラジオを見聞きでき、大きな音も平気です。食事制限があれば別ですが、好きなときに、好きなものを食べられます。家族もそばにいます。院内感染の可能性も少ないので、小さいお子さんも大丈夫です。医者や看護師も選べます。在宅では患者さん主体の医療が行われると言えます。しかし、そういう恵まれた人は、一体どのくらいいるでしょうか?

在宅にはいくつか必要な条件があります。第一に、居室です。ベッドや布団の幅に加え、上下左右にゆとりも必要です。風邪をひかせないための換気、温度・湿度の調整のための冷暖房器具は必需品です。ポータブルトイレや人工呼吸器などの置き場所が必要になるかもしれません。

第二に人です。二十四時間在宅で見るとなると、どうしても三人は必要で、この数は療養が長引けば長引くほど重要です。特に夜間の見守りは連続三日以上続けば、介護をする側が倒れる事態も起こり得ます。

第三に経済です。実はこれが一番大切かもしれません。では療養型施設と、在宅を比較してみましょう。

まず、介護保険利用の療養型の施設では、月にいくらかかるでしょうか。表のように、沖縄県では現在、二六・七万円から三七・八万円かかり、利用者負担は要介護5の場合でも一カ月で三万六千円かかります。そのほかにも、食事代やおむつ代などのホテルコストが十万円近くかかります。

国民年金の場合、一月当たり五万円前後の給付金から介護保険料が天引きされた後、給付されます。施設を利用した場合、年金でまかなえない差額分(五―十万円)が、家族の懐から出ることになります。

次に、在宅ではどうでしょうか? 仮に家人が仕事を辞めて介護にまわるとすると、仕事をしていた際にもらっていた給料分がマイナスとなります。そして介護の二十四時間勤務が始まります。さらに介護保険サービスを目いっぱい受けたとすると、三万六千円の支出があり、そのほかにも、おむつ代、電気代(クーラー、電動ベッドなど)、介護用品などで三万円から五万円ほどかかります。こうした支出をした場合、一般の家庭では困窮しないでしょうか?

国は在宅医療を積極的に勧めています。病院も在院日数短縮のために、在宅医療を推進しています。しかし、それによりつらい思いをしている患者さんや家族が増加していないでしょうか? 「どうしても」「帰りたい」という声を受け止めるのが本来の在宅医療です。もし、あなたやあなたの家族が在宅医療を希望したら、することになったら…。

詳しい内容に関しては、かかりつけ医やケースワーカーなどにご相談ください。