沖縄県医師会 > 健康の話 > うちなー健康歳時記 > うちなー健康歳時記2007年掲載分 > 腰痛を甘くみないで

腰痛を甘くみないで(2007年1月30日掲載)

上原 昌義(沖縄協同病院)

しびれ・排尿障害の原因にも

正確な診断 治療の一歩

厚生労働省が調査した有訴率(症状を訴えた率)で風邪や頭痛を抑え一番多いのは腰痛です。

腰痛の原因にはいろいろな種類があり、大体は腰椎(ようつい)(腰の骨)由来です。加齢によって腰椎が変形した変性性の腰痛が最も多く、スポーツや事故および腰を酷使して生じた外傷性の腰痛、感染やリウマチ由来の炎症性の腰痛、骨粗しょう症由来の代謝性の腰痛、がんの骨転移や神経の腫瘍(しゅよう)などの腫瘍性腰痛が挙げられます。

大動脈瘤(りゅう)破裂、胃かいようや膵炎(すいえん)、尿管結石など内臓に起因することもあります。従って症状の性質や治療法もそれぞれ異なるため、正しい診断が大変重要です。

例えば、腰椎の加齢変化による腰痛は動いたときに痛くなります(運動時痛)が、寝ていても痛いとき(自発痛)はがんや感染などからきていることもあります。また足に放散するしびれや痛み、歩くと足がもたつく(歩行障害)、排便・排尿に支障をきたす(ぼうこう直腸障害)など、腰とは関係なさそうな症状も実は腰痛より深刻な状態で、ほっておくと回復が難しくなることがあります。

治療を完結させるためにはスタートがとても大切です。決して自己判断せずにまずは近くの整形外科を受診することを強くお勧めします。

治療には手術をしないで治す方法(保存的治療)と手術する方法(手術治療)があります。保存的治療には、痛み止めや筋緊張を和らげる内服などの薬物療法、腰部の安静を保持するコルセットなどの装具療法、腰のけん引や温熱・電気・マッサージなどの物理療法、神経ブロック注射、運動療法があります。それぞれ治療効果に個人差があり、症状の経過をみながら併用するとよいでしょう。

ストレッチや腰椎を支える筋肉を強化する運動療法は特に重要で、腹筋、背筋、お尻の筋肉が強化されると腰椎の負担が軽減されるため、痛みが出にくくなります。まさに筋肉で作る自前のコルセットです。

しかし、無理な運動は体を壊してしまうことがありますので年齢や体力を考慮した適切な運動指導を受けてください。主治医から手術するほどではないと言われたのなら、大きな問題はないということです。頑張って治療を継続してください。

一方、保存的治療を選択した場合、いつまで継続するのか、腰痛が持続して治療の効果がない場合はどの時点で手術を考慮するのか見極めが大変重要です。原則として重度の歩行障害、筋力低下、便や尿の排せつ障害が現れた場合は手術が必要です。手術には神経の圧迫を取り除く神経除圧術や、腰椎の不安定性や変形を改善する固定術・矯正術があります。

しかし、手術にも限界があり、あらゆる症状がなくなるとは限りません。そのため主治医には症状を十分伝えること以外に、日常の生活様式や生きがい、考え方をしっかり伝え、その上で治療法を選んでもらうことがいい結果につながると思います。遠慮はいりません。不安なことや、分からない点があれば気兼ねなくお尋ねください。あなたの主治医は必ず愛情深く答えてくれるはずです。