「てんかん」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? えたいの知れない恐ろしいもの? 治らない精神障害?
世界保健機関(WHO)が定めた「てんかん」の定義では、「てんかん」とは(1)大脳の神経細胞の過剰発射(異常な興奮・脳波上の発作発射)によって引き起こされ(2)反復する発作(てんかん発作)を主症状とするもので(3)いろいろな原因によって生じた慢性の脳の病気である、とあります。脳はさまざまな機能を持っていますので、興奮を起こした場所によって、てんかん発作の症状が異なります。たとえば手足をつかさどる神経が勝手に興奮した場合、手足のけいれんが起こります。
脳細胞の勝手な興奮はどのように証明するのでしょう? それが脳波検査になります。心電図のように、頭に電極を置いて脳から発生する微弱な電流を記録する検査です。では、脳波検査で異常が認められた場合、すぐてんかんと診断されるのでしょうか? 答えはノーです。発作やその痕跡を目撃するか、起きた証拠を探さなければいけません。さらに発作を認めたからといって、すぐにてんかんと診断されるわけではなく、二回以上繰り返される必要があります。
てんかんの原因はなんでしょうか? 定義では『いろいろな』とあります。大きく分けて(1)脳に構造上の問題が証明される場合(症候性)(2)構造上の異常は証明できないが、かなり疑われる場合(潜因性)(3)脳神経機能の異常によるもの(特発性)の三つがあります。(3)は遺伝的あるいは体質的なものとこれまで言われてきたもので、近年脳神経の興奮を制御するイオンチャンネルの異常が証明されてきており、遺伝子も特定されてきています。
では、いったい何人くらいの患者がいるのでしょうか? 神経疾患の中で、てんかんは最も罹患(りかん)率の高い疾患です。総人口の約1%といわれており、生涯一回でも発作を起こす可能性は約10%、二回以上経験する人は約4%とされます。従って学校だと一学年に百人いれば約一人、てんかんの児童がいる計算になります。かなり多い数字だと思いませんか。
てんかんには、小児てんかん、大人のてんかんがあります。小児てんかんは種類も多く、診断によって治癒率が全く違います。しかし、小児には良性のものが多いので約七―八割が薬で発作を抑制でき、内服を止めることもできるでしょう。しかし残り約二割は大人まで内服を継続するか、あるいは発作を止めることが難しいということになります。大人のてんかんの場合は小児と比べると治癒率が下がります。詳しい情報は主治医の先生に聞いてみてください。
てんかんは慢性の疾患です。信頼できる主治医と焦らずに付き合っていくことが治療の一番の秘訣(ひけつ)だと思います。また、てんかんについて仲間で勉強したい、同じ患者同士で支え合いたいと思う方、患者と親の会である『波の会』があります。詳しくは波の会沖縄支部事務局098(889)2299までお問い合わせください。