昨年九月から十一月にかけて県内で麻しん患者発生が三例ありましたが、医療機関および福祉保健所の懸命な努力によって何とか流行を防ぐことができました。一例は関東へ旅行した高校生、二例は関東からの修学旅行中の高校生でした。三例の高校生とも麻しんの予防接種を受けていませんでした。
麻しんは感染力が非常に強く、かかった患者の三割が入院し、千人に一人が死亡する怖い感染症です。麻しんにかかったら特効薬はなく、患者本人の自然治癒力に期待するしかありません。しかし、予防接種によって確実に防ぐことができます。そして、天然痘のように撲滅することも可能で、世界保健機関(WHO)では日本を含む西太平洋地域で二〇一二年を麻しんの排除目標年に決定しています。
西太平洋地域で現在でも麻しんが普通にみられる国はカンボジア、中国、ラオス、パプアニューギニア、フィリピンと日本の六カ国です。世界からみれば、沖縄県を含めて日本は麻しん対策の後進国となっているのが現状です。
麻しんの流行を防ぐためには予防接種率を95%以上に上げることが必要ですが、県内の〇五年度の一歳児の接種率は80・2%と低く、いつ麻しんが流行してもおかしくない状況です。
昨年四月から予防接種法の一部改正があり、MR(麻しん・風しん)混合ワクチンが導入され、接種年齢も一歳以上二歳未満の一年間となり、更に六月からの再改正で二回接種も導入され、二回目を小学校入学前一年間に行うことになりました。
麻しんが流行してから慌てるよりも、一歳になったらすぐに予防接種を受けることが重要です。保護者はもちろん、保育園、幼稚園でも麻しんの予防接種歴を確認してください。
上記の定期予防接種のほかに現在、予防接種法改正の経過措置として今年三月まで、七歳半までは無料で麻しんワクチンまたはMRワクチンの接種ができますので、麻しんの予防接種を受けていない子は早めに予防接種を受けさせてください。七歳半以上では有料となりますが、必ず予防接種を受けさせるべきで、特に現在でも麻しんが流行している関東方面へ旅行の予定がある場合は必須です。
また、これまでに一度、麻しんおよび風しんのワクチンを接種した小・中・高校生も有料にはなりますが、できれば再度MRワクチンを接種することをお勧めします。近い将来、市町村が実施主体となり、無料でできるようになればと思います。もう一度、母子手帳で予防接種歴を確認し、かかりつけの小児科医にご相談ください。
麻しんにかからないためにも、麻しんを移さないためにも、MRワクチンの予防接種率100%を目指しましょう。麻しんは予防接種で確実に予防できる病気で、二○一二年までに世界中から麻しんがなくなるようにしましょう。すべての子どもは麻しんの予防接種を受ける権利があり、保護者には予防接種を受けさせる義務があります。一歳の誕生日にはMRワクチンを受けさせ、子どもの健康をお祝いしましょう。