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動脈硬化の早期発見(2006年12月26日掲載)

村重 明宏(北部地区医師会病院)

歩くと痛い足に要注意

小さな変化見逃さないで

最近、歩くと足が痛いという症状はありませんか。動脈硬化で心臓の血管がトラブルを起こすと、狭心症や心筋梗塞(こうそく)になることはご存じかもしれません。しかし動脈硬化とは血管の老化であり、心臓だけでなく全身の血管に起こります。当然、足の血管にも動脈硬化は起こり、進行すると血管が狭くなったり、詰まったりして血液の流れが悪くなります。

その症状には個人差がありますが、足の冷えなどからはじまり、次第に以前は歩けていた道が途中で足が痛くて歩けないなどの症状が起こってきます。

足の動脈硬化について、とても恐ろしい報告があります。歩くと痛みが出るほど足の動脈硬化が進行した人を五年間追跡調査すると、約三割もの人が死亡していたのです。さらに十年後まで調査を続けると、なんと半数の人が死亡していたという恐ろしい結果でした。

死亡原因のほとんどは心筋梗塞と脳卒中によるものでした。足の血管に動脈硬化が起こっている人は心臓や脳の血管にも動脈硬化が起こっており、最終的に心筋梗塞、脳卒中で亡くなったということです。

すなわち、足の動脈硬化は全身の動脈硬化が進行しているというシグナルだったのです。

動脈硬化の早期発見は検査によっても可能です。最近では、足や首の血管を簡単に血管超音波(エコー)検査で観察でき、この結果から全身の動脈硬化の進行具合を推測することができます。そして、動脈硬化の進行が疑われた人はさらに心臓や脳など命にかかわる血管の精密検査が必要と考えます。最終的に、心筋梗塞や脳卒中を予防することが動脈硬化に対する大きな治療目標の一つだからです。そのほか、足の血圧測定や、脈波速度検査といって、心臓から送り出された血液が全身へ到達する時間により血管の硬さを調べ、そこから動脈硬化の程度を推測する検査もあります。

当院では、年間五百例近い血管内治療(風船治療)を行っていますが、このうち約二割の患者さんが心臓と足の両方に血管の狭窄(きょうさく)病変を持っています。先日も、六十八歳の糖尿病の患者さんが、最近、三百メートルくらい歩くと足が痛くて歩けなくなるとのことで当院を紹介受診されました。そして血管超音波検査で血管が狭くなっているところが見つかり、血管造影検査を行うと、やはり足の血管が大腿(だいたい)のところで詰まりかかっていました。同時に行った心臓の血管造影検査でも、血管の詰まりかかったところが見つかりました。

この患者さんは足と心臓の両方を、血管内から風船で狭いところを広げ、ステントという金属の筒を血管に埋め込む血管内手術を行い、数日で元気に退院して行きました。このように、動脈硬化の早期発見、早期治療により元気で長生きが可能になるのです。

糖尿病、高血圧、高脂血症など生活習慣病をお持ちの患者さんは、歩くと足のだるさや痛みがないか確認してください。小さな変化を見逃さず、早期発見を心掛け、血管治療の専門病院で相談してみましょう。