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働く人の健康点検10ヵ条(2006年12月12日掲載)

崎原 永辰(那覇市医師会生活習慣病検診センター)

若いときから油断禁物

めりはりのある生活を

人様の生活習慣を変えるということは、医者といえども容易なことではない。生活習慣病対策が叫ばれて十年近くになるが、肝心の生活習慣病は増加するばかりである。

人の生活習慣がおいそれと変わらないのには理由がある。第一に、生活習慣病は痛みを伴わない病気が多いこと。第二に、自分の生活習慣はなかなか客観的に評価することができないこと。第三に、長年繰り返し行ってきた行動パターンは一種の条件反射として体に染み付いてしまうことである。医者の立場で、少し強めのショックを与えることで短期的には効果を挙げる事ができるが、またもとのもくあみになってしまうことが多い。

また、これは一番大きな問題であるが、第四に、自分の生活習慣といえども周囲に影響されることが大きいことである。一日を大まかに三等分して、睡眠と仕事と家庭でそれぞれ八時間ずつの持ち時間があると仮定すると、かなりゆとりのある生活が送れると思うが、現実的には通勤に要する時間や残業時間などが予想以上に多く、仕事中心の生活スタイルとなっている例が多い。特に残業時間の余波は夜型の生活を助長し、夕食か夜食か分からないような食事を取り横になる結果、翌朝は胃もたれで朝食抜きということになる。

ゆとりのない生活スタイルは、結果として食べすぎや運動不足、喫煙、仕事上の付き合いや寝酒などアルコールの多飲につながることが多い上、いざ改善しようと思っても思い通りにいかないものである。

沖縄県が全国でも突出して肥満の多い地域であることが明らかとなった。沖縄では、学生から社会人になる二十―三十代の若者が急激に太りだすことが多いため、新卒の労働者は気をゆるめてはいけない。若いうちから「薬を処方しましょうか」と言われるようでは、将来が思いやられる。今じりじりと後退してきている長寿県沖縄の地位が今後も安泰であるためには、何よりもまず肥満者の割合を、せめて全国並みにするということだけでもよいと思っている。

那覇市の健康推進課は、市民の健康に関する重点課題として、肥満対策、喫煙対策とアルコール対策を挙げ、啓発活動、実践活動を行っているが、その指針として「働く人の健康点検十カ条」なるものを作成した。

その昔、日本では貝原益軒の「養生訓」、米国ではブレスローの「七つの健康習慣」などのように、健康に長生きするための教えが数知れずあるが、これもそれらに劣らずの出来栄えと思っている。この「働く人の健康点検十カ条」の利用方法は、会社の朝礼の時に、社員全員で社訓を唱えるように音読することである。こうすることで、現実はどうあれ、あしき生活習慣への軽いジャブとなり、十ラウンドあたりから徐々に効果がでてくると信じている。

生活習慣を改善するということは、なにも禁欲生活をしなさいと言っているのではない。必要なところでおあずけがあってこそ、めりはりがあって余裕のある健康な生活になるのである。