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胃がん(2006年12月5日掲載)

平良 勝己(おもろまちメディカルセンター)

食生活、禁煙で予防

早期発見へ定期検診を

がんは日本人の死亡原因の第一位であり、毎年死亡率が増加している難治性の疾患です。胃がんは日本で最も罹患(りかん)率(病気になる確率)の高いがんで、年間十万人程度の方が発症しています。胃がんの死亡率は、早期診断・早期治療など医療技術の進歩により年々減少傾向にあります。二〇〇三年の人口動態統計によると日本の胃がんの年間死亡者数は約五万人と報告されています。

胃は口から入った食物を一時的に貯蔵し、消化吸収のための準備をするところです。胃壁は食べ物を混ぜるために厚い筋肉でつくられ、内側は粘膜という軟らかい組織で覆われています。粘膜からは胃酸と消化酵素を含む胃液や粘膜を保護する粘液が出てきます。

胃がんは粘膜から発生します。胃がんの発生に最も大きなかかわりを持っているのは、食事だと考えられています。塩蔵品(塩漬けの魚や肉、漬物など)を大量に、続けて習慣的に食べると、胃がんにかかりやすくなるといえます。魚や肉の焼け焦げたものにも、たくさんの発がん物質が含まれています。また、むやみに熱いものを急に胃の中に流し込んだりすることもよくありません。たばこも胃がんの発生を増やします。つまり、いろいろなものをバランスよく食べることと、禁煙をするだけでも相当の予防になります。

最近はピロリ菌が注目されています。この菌自体には発がん性はありませんが、感染することにより慢性委縮性胃炎を引き起こし、がん化に関与していると思われます。

症状で最も多いのが上腹部痛です。以下、胃部の膨満感および不快感、食欲不振、悪心、嘔吐(おうと)、げっぷ、胸やけ、背部痛、口臭などがありますが、これらの症状は胃がん特有の症状ではありません。進行すると体重減少、貧血、嚥下(えんげ)困難、疲労感などが表れます。いずれにせよ、胃がんに特有な症状はなく、早期胃がんの半数は全く自覚症状がありません。

診断には、胃の内側を直接観察できると同時に怪しい部分の組織を一部採取してがん細胞の有無をチェックできる内視鏡検査が大変有効です。胃がんは粘膜から発生するので、内側からみることにより、きわめて小さく、浅い粘膜にとどまった早期がんでも診断することが可能です。

胃がんと診断されたら最も適切な治療方法を主治医と相談し、すぐに治療を開始する必要があります。治療は手術療法、内視鏡治療、薬物療法、放射線療法などがあります。手術は従来の開腹手術に加え、腹腔(ふくくう)鏡を用いた胃切除も行われるようになっています。また、粘膜にとどまる小さな早期のがんの一部に対しては内視鏡的粘膜切除が行われます。

胃がんは検診で容易に早期に発見することができますし、早期に発見すればそれだけ簡単な治療で治ります。胃がんは日本人に大変多い病気ですから、四十歳になったら定期的に検診(職場検診、住民検診、人間ドックなど)を受け、早期発見に努めることをお勧めします。