皆さんは若者に急増する性感染症(STD=sexually transmitted diseases)と聞いてまず頭に浮かぶのは何ですか? エイズでしょうか? しかし、性感染症はエイズだけではありません。現在、最も多く、そして急増しているのはクラミジア感染症です。
全国で百万人以上の感染者がいるといわれ、特に若い女性に急増しており、感染者は女性が男性の二倍以上という驚くべき実態があります。女性に多い理由は、女性の性器の内側は粘膜に覆われ、病原体が侵入しやすく、さらに性器が体の奥にあるため感染に気付きにくいためです。
クラミジア感染症は「クラミジア・トラコマチス」という病原体が原因です。性行為により性器に感染するほか、オーラルセックス(口での性行為)で、のどにも感染します。ほっておくと男女とも不妊症になったり、女性は妊娠しても子宮外妊娠、流産、早産の原因になったりします。
また、母親が感染していると新生児が産道で感染し、新生児肺炎や結膜炎を起こすことがあります。さらに、クラミジア感染症にかかると、エイズウイルス(HIV)に感染する危険性が三―四倍高くなると言われ、決して甘く考えてはいけません。
この感染症の恐ろしいところは、感染しても、ほとんど自覚症状がないことです。女性の80%が無症状ですが、おりものの増加、下腹部痛、不正出血、性交痛がみられることがあります。男性も50%が無症状ですが、排尿時の痛み、尿道口からうみが出ることもあります。
感染を防ぐにはどうすればよいのでしょうか? 性感染症は、必ずパートナーが存在します。パートナーが多ければ、危険性は高まります。不特定多数のパートナーとの性行為や、性感染症の可能性を否定できないパートナーとの性行為を避けることが、予防には最も重要です。
また、コンドームの使用も必要不可欠なものです。ただし、性行為の最初から最後まで、きちんと使用しなければなりません。オーラルセックスでも使用する必要があります。最近は、のどへの感染も増えているのです。
診断は男女とも簡単な検査(抗原・抗体検査)でできます。症状があればもちろん、症状がなくてもパートナーが感染している場合、女性は産婦人科、男性は泌尿器科を早めに受診しましょう。自覚症状がないのが特徴なので、定期的な検査をお勧めします。
治療は、飲み薬の抗生剤が基本です。処方された薬は指示通りに服用し、治療終了後には治っているか再検査をする必要があります。そして、完治するまで性行為をしてはいけません。
かかってしまった場合、誰がうつしたということではなく、互いを思いやり、しっかりと検査と治療を受け、これからの二人がより深い信頼関係を築くことが大切なのです。