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不老長寿の秘薬(2006年11月21日掲載)

友利 正行(ともり内科循環器科)

「腹八分」は唯一の治療

イメージづくりが動機付けに

「永遠(とわ)に美しく」という映画をご存じですか。永遠の若さと美ぼうがかなえられる世紀の秘薬を手に入れたものの、実は不老不死の薬であったためおどろおどろしいストーリーが展開される映画でした。

不死というのは少々気味悪いので、不老長寿という言葉で話を進めたいと思います。

古来、不老長寿の秘薬にまつわる逸話は数多く、秦の始皇帝の秘薬探しから始まり、唐の時代には「丹薬」という秘薬が流行したのですが、愛用した歴代皇帝は早死にしたそうです。薬の中にヒ素や水銀が混じっていたようです。

そのほかにも漢方や薬膳(やくぜん)料理、人魚の肉、さまざまな不老長寿術、療法があったようですが本物の秘薬はまだ見つかっていません。

現代に至っては、さまざまな効能をうたったサプリメントや健康食品がはんらんしています。

好ましい物ばかりではないのが現実で、重大な副作用を起こす薬物がインターネットで売られていたこともありました。自分の体に入れるものには十分な注意が必要です。秘薬はまだ見つかっていないのですから。

科学の世界でも近年長寿の研究が盛んに行われています。

脳内ホルモンや遺伝子操作で、虫や小動物の寿命をわずかに延ばすことができたそうですが、人間に実用化されるにはまだまだ時間がかかるでしょう。

現在、あらゆる生物で寿命を延ばす可能性が高い方法は、何だと思いますか? それは、必要な栄養素は十分に取りながらカロリーを制限することです。カロリー制限がなぜ老化を遅らせることができるのか、まだ何もわかっていませんが「腹八分に医者いらず」は本当のようです。

老化という現象が、人類共通の逃れられない病だとしたら、カロリー制限は唯一の治療法かもしれません。

とはいえ、不老長寿の秘薬がカロリー制限と聞いて皆さんさぞかしがっかりしたことでしょうね。確かに楽しい方法ではありませんし、一生続けなければいけません。実際に腹八分の食事をされている長寿の方、カロリー制限で生活習慣病を克服できた方はなぜ実践できたのでしょう。

そういう方々は無意識のうちにも自分自身がこうありたいというイメージを持っているように私には感じられます。

ゴルフやテニスなどのスポーツをしている自分、さまざまな職業がありますが現役でいる自分、年は重ねていくけれども若々しい自分の姿など、人それぞれですが自分自身のイメージづくりが強い動機付けに結びつくのではないでしょうか。

いまや科学はコンピューターの発達に伴い驚くべきスピードで進歩しています。秘薬が現実のものになる日が来るかもしれません。不老長寿を手に入れ、人の寿命が飛躍的に延びた世界とは…。