喫煙は、喫煙しない人に比べて、肺がんは五倍、喉頭(こうとう)がん三十三倍、肝臓がん三倍、食道がん二倍、胃がん一・四倍、肺気腫五倍、心・血管系一・七倍など、軒並み死亡率・罹患(りかん)率のリスクを高めます。
たばこが体に悪いことは、喫煙者の方もご存じですが、なかなかやめることができないことが多いようです。これはなぜでしょうか。たばこには二百種以上の有害物質が含まれますが、ニコチン、タール、一酸化炭素が三大有害物質です。中でもニコチンは依存性があります。このため喫煙している方が、喫煙をやめるとイライラ感や頭痛、だるい、不眠など、いわゆる離脱症状がでてきて非常にたばこを吸いたくなるのです。
この離脱症状は禁煙して約八時間後、二―三日後、二週前後、一カ月前後に強くなります。一般に、禁煙後この時期に再喫煙しやすくなります。逆にいうと、この時期をうまく乗り切れば、禁煙の成功率が高まります。たばこを吸いたくなったら、たばこの害を思い浮かべる、水やお茶を飲む、軽い運動をする、など気分を転換することで吸いたい気持ちを振り切りましょう。
しかし、それでもつい吸ってしまうことも多いようです。このため、離脱症状を軽くし、無理なく禁煙が実行されるよう、禁煙をサポートする手段としてニコチン貼付薬があります。この薬は、皮膚からニコチンが吸収されるようになっており、これをはることにより禁煙によるニコチン離脱症状を和らげ、徐々にニコチン量を減らし、完全な離脱にもっていくものです。
ご存じのように、本年四月から禁煙治療が保険適用となり、また六月よりニコチン貼付薬も保険適用となりました。禁煙は自身で実行できれば、それにこしたことはないのですが、自己流ではなかなか成功しないことが多いようです。自身のみでは禁煙が難しい方には禁煙外来のある施設での禁煙治療を受けられることをおすすめいたします。
禁煙治療は、ニコチン依存症のスクリーニングで一定程度のニコチン依存度があること、喫煙指数(一日喫煙本数ラ喫煙年数)が二百以上であること、などが保険適用の条件となります。保険適用とならない場合は自由診療による禁煙治療となります。いずれにせよ禁煙治療は、禁煙宣言とともに禁煙開始日を決定し、スタートします。
一般的には禁煙開始とともにニコチン貼付薬を毎日一枚二十四時間貼り、四週間目、六週間目に薬の量を減らしていき八週で治療終了となります。そのまま禁煙を続けることが肝要ですが、その後、つい吸ってしまったとしても禁煙を断念しないことが大切です。
大方は、禁煙成功までに三―四回の禁煙試行をしています。吸いたくなった時は、喫煙による障害、禁煙で自らはもちろん周辺の大切な人の健康を侵さない、禁煙することなどによる金銭面の有利性などを思い浮かべる、などで喫煙欲求を乗り切りましょう。そして喫煙している方に対し、禁煙「指導」を行うくらいの意気込みで禁煙を成功させ、健康を守りましょう。