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関節の水抜き(2006年10月17日掲載)

新垣 寛(大浜第一病院)

「癖になる」は誤解

治療に不可欠 検査材料にも

今回はひざ関節に水がたまる関節水腫についてお話したいと思います。ひざ関節水腫が認められる中高年の患者さんに「関節に水がたまっていますから水を抜きましょう」と説明すると、患者さんから「水を抜くと癖になるという話を聞くのですが」という質問が返ってくることがあります。これは誤解です。水がたまるのは関節に炎症があるからで、水を抜くからたまるのではありません。

関節の水は関節の袋の内側にある滑膜から作られており、ひざ関節の潤滑油として大切で、さらに軟骨の栄養源となる物質も含んでいます。正常なひざ関節液は透明で、数ミリリットルと量が少なく、粘着性が高く納豆のようにネバネバで糸を引きます。少ない水は放置しておいても自然と吸収されますが多いときはなかなか吸収されず、痛みも簡単には治まりません。

水を抜くのは、診断および治療のためです。関節内の圧力が低下し、痛みが軽減しますし、抜き取った水も性状を調べるために使用します。検査では水の色を調べたり、ばい菌(細菌)が入り込んでいないか(培養検査)、顕微鏡で炎症を起こす物質が存在しないかを調べます。

水が黄色透明で、ばい菌がいなければ、関節水腫の代表的な疾患の変形性ひざ関節症が考えられます。そうであれば、関節液の成分であるヒアルロン酸をひざ関節内に注射することで炎症を抑えたりします。

水が多量にあり痛みが強いときは炎症を抑える力が強いステロイド剤を注射することもあります。ただし、ステロイド剤は、副作用や合併症を引き起こすことがありますので、症状が強くないときには使用を控えています。

理学療法における筋力強化は、ひざ関節を安定させることで炎症を抑え、水腫を抑える可能性もあります。また、薬物療法として消炎鎮痛剤で炎症を抑えることで水が少なくなることもありますが、著しく効果的な内服薬は残念ながら今のところありません。

このような治療を受けても関節水腫が改善せず痛みが強く、歩行も困難となった場合には、何らかの外科的治療が必要なこともあります。

他に関節水腫をきたす疾患には、何らかの原因でひざ関節にばい菌が入る化膿(かのう)性ひざ関節炎があります。高熱があり、ひざ関節全体に熱を持ち、痛みが強く歩行が困難になったりします。

水を抜いてみると混濁していて、培養検査でもばい菌が認められます。早期に発見、治療を行わなければ、ひざ関節の軟骨が破壊され、歩行も困難になるような大きな機能障害を起こしてしまいます。慢性化すると治療に難渋しますので非常に注意しなければなりません。

関節水腫をきたす他の疾患として、関節リウマチ、痛風や偽痛風などもあります。ひざ関節に水がたまるのは何らかの原因があるからですので、一度は水を抜き、その性状などで診断をつけてもらうことをお勧めします。