沖縄県医師会 > 健康の話 > うちなー健康歳時記 > うちなー健康歳時記2006年掲載分 > 秋の養生

秋の養生(2006年10月10日掲載)

仲原 靖夫(仲原漢方クリニック)

体調不良は夏に原因

体温調節機能助ける生活を

そろそろ朝夕涼しくなり、秋の季節の変化が体に影響を及ぼし、微妙に体調を崩す人も出てきているのではないでしょうか。漢方では現在の体の状態は一つ前の季節の対応により決まると考えます。もし秋に風邪をひくとすると現代医学ではそのときウイルスに感染したと考えますが、漢方では夏の過ごし方が悪かったから風邪をひくと考えるのです。

東洋医学の古典『黄帝(こうてい)内経(だいけい)素問(そもん)・四気(しき)調身(ちょうしん)大論(たいろん)』の記載を見てみましょう。

『夏三月これを蕃秀(ばんしゅう)という。天地の気交わり、万物華さき實る。(中略)気をして泄することを得せしめ愛するところ外に在るが如(ごと)くす。(中略)之に逆らうときはすなわち心を傷(やぶ)り、秋亥虐(がいぎゃく)を為(な)す』

この意味は、「夏の季節は太陽のエネルギーが植物を育て、立派な花を咲かせ実りをもたらす季節。暑い時は汗をかいて体温を下げるようにしなければならない。そうでないと秋にせきをしてマラリアのような病気になる」というのです。さらに説明すると「夏は暑いので体温を下げるためには汗をかくようにしなければならない。汗をかかないような生活をすると秋に発熱を伴うせきの病気になる」というのです。

汗をかかない生活とは体を冷やすことです。暑いときに直接体を冷やし続けると汗をかきません。すると涼しくなる秋には夏に冷やし続けられた体は気温の変化に対応できないため発熱し、ひどいせきになるのです。夏は気温が高いので、冷たい飲み物や食べ物、クーラーで体を冷やしても目立った変化はみられません。ところが風向きが変わり気温が下がりだすと、冷やし続けられた体は体温維持機能が微妙に低下し、風邪をひいて熱を出すのです。

皆さんは大丈夫でしょうか。秋のこの時期になって風邪をひいているか、ぜんそくの発作がおきている方は夏の間、体を冷やし続けなかったか思い出してください。

さらに秋の過ごし方は冬の健康にも影響を与えます。『秋三月此(こ)れを容平(ようへい)という。天気以(も)って急、地気は以って明らかなり。…神気を収斂(しゅうれん)し、秋気を平ならしむ。…これに逆らえば即(すなわ)ち肺を傷り、冬■泄(そんせつ)をなす』

その意味は「秋は天気がぴんと張り詰めて空気も澄んでいる。これから冬に向かうので気持ちを引き締め、体の元気のエネルギーをもらさないように保ち、秋の気候の変化に対応しなければ肺の病気になり、冬には下痢が止まらなくなる」とあります。エネルギーを漏らすとは汗をかきっぱなしにするということです。涼しくなる秋、皮膚が冷えると鼻炎になり、気管支炎、ぜんそくを起こしやすくなります。冷えた体は冬になると更に胃腸まで冷えて下痢が止まらなくなるのです。

さて、みなさんの冬への備えは大丈夫でしょうか。恒温動物哺乳(ほにゅう)類に属する人体は、どのような気候にあっても体温を一定に保つように自動調節しています。それぞれの季節で、体に負担をかけずに、体温を維持する調節機能を効果的に助ける生活がその季節の養生になると思われます。

漢方に『聖人は未病を治す』という言葉があります。季節に先立って体の備えを怠らない知恵もその中に入っているものと思われます。
※注:■は夕ヘンに食