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尿検査と腎臓病(2006年10月3日掲載)

吉 晋一郎(吉クリニック)

症状なく透析の危険も

簡単な検査で早期発見を

尿検査は、腎臓病の検査の中で最も多く行われ、尿タンパク、尿潜血の有無を調べます(今回は糖尿の検査は省きます)。

尿タンパクは、通常でも一日一五〇ミリグラム以下の範囲で、排せつされています。病的なタンパク尿は、量により+、2+、3+、4+と分類されます。

潜血とは、尿の中に血液の成分である赤血球が混ざっていないかどうかを調べる検査で、これもその程度によりマイナスから4+までの五段階に分けられます。

では、一万人が尿検査を受けたとするとその結果はどのようになるでしょう?

最初の検査で、全体の一割に当たる、約千人がタンパク、潜血のどちらかの異常で再検査を必要とします。その中には、運動後や体調不良による一時的な尿異常が多く含まれ、体調を整え、朝一番の尿で再検査をすると、ほぼ半数は異常を認めません。それでも約五百人の方は二回目も陽性で、病院で精密検査をするように言われます。

タンパク尿が続く病気は、主に慢性腎炎で、軽い人から、将来透析を必要とする重い病気まで含まれます。高齢な人ほど、病気の可能性が高いので、要注意です。血尿が出るのは、腎炎以外に、腎結石やぼうこう炎など泌尿器科的病気も多く、五十歳以上の人は、ぼうこうがんなどもたまに見つかりますので初めて血尿が見つかった方は、ぜひ病院を受診しましょう。

実際に、病院ではどのような検査をするのでしょうか? まず血液を採取して腎臓の働きを調べたり(血清クレアチニン値)、超音波で腎臓やぼうこうの異常の有無を見るなどして詳しい情報を得ます。その結果、約四百人は、起立性タンパク尿、成長に伴う生理的タンパク尿などの無害な検査異常と判断され、半年に一回程度の尿検査で経過を見ます。残った百人は常に尿タンパクか潜血がある、または両方が+以上の方です。

その場合、さらに詳しい腎機能検査が必要で、一日の尿をためて、タンパクの量を測定したり、腎機能が正常の何%程度あるかの測定を行います。精密検査の結果、約七割の方は、腎機能の悪化する可能性の少ない、無症候性タンパク尿あるいは血尿と診断され、治療は受けずに、定期的に検査を受けます。

本当に治療が必要な方は、検診を受けた一万人の中に三十人ほどだと考えられます。そのうち三分の二は、生涯タンパク尿が持続しますが、腎機能は低下せずに軽い慢性腎炎あるいは持続性タンパク尿として治療を受けます。残念ながら、全体のうち十人程度は、腎機能が低下して慢性腎不全になり、そのうち二人は透析治療を受けることになると考えられます。これを沖縄百万県民に換算すると、毎年二百人以上の透析者が発生し、大きな問題となっています。

腎臓病は症状がほとんど無く、知らないうちに重い病気を合併していることがあります。尿検査は、体に負担がなく、簡単にできる割にはいろんな病気の早期発見に役立ちますので、年に一度は気軽に検査を受けるようにしましょう。