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沖縄周産期医療の実情(2006年9月19日掲載)

宮城 雅也(県立南部医療センター・こども医療センター)

新生児の死亡率改善

妊婦の自己管理充実を

周産期とは、大きな解釈では妊娠から生まれ、安定して育つまでの時期を指しています(胎児期+新生児期)。この期間は、人生で最大の成長期で、少しのことが将来へ影響を残す大切な時期です。産婦人科と新生児科の連携が大切な時期でもあります。

本県の新生児死亡率(生後一カ月以内の死亡率)は、全国で常にワースト10に入っていました。しかし二〇〇二年以降は、新生児死亡率は驚くほど改善し、全国のベスト10に入ってきています。新生児死亡率の低い県は、当然未熟児(二五〇〇グラム未満の低出生体重児)の出生率も低いことが常識でした。そのため、未熟児出生率の高い県で新生児死亡率の低下は、難しいとされています。

本県の未熟児出生率は全国一高く、それが新生児死亡率上昇の原因と考えられていました。そのような環境の中で、新生児死亡率の改善は驚くべきことです。その礎となったのは、周産期ネットワークの構築と周産期センターの充実が挙げられます。

本県には、県立中部病院、県立こども医療センターに総合周産期母子医療センター、琉球大学付属病院に周産母子医療センター、那覇市立、沖縄赤十字病院に地域周産期医療センター、県立宮古、八重山病院に周産期センターがあり、各地域の産婦人科医院・病院と連携をとって周産期ネットワークを構築し、二十四時間態勢で、おなかの中の赤ちゃんを含め、生まれてくる赤ちゃんの安全を見守っています。小さな離島はヘリコプターなどの航空機を利用して専門医が迎えに行くようになっています。

現場の人々による血のにじむ努力により、新生児死亡率は改善してきました。これ以上の成果を残すには県民一人一人が、周りの妊婦さんを支援し、未熟児出生率を下げることです。

全国の未熟児出生率の上昇は、本県に迫る勢いです。はっきりとした原因は不明ですが、最近の食生活に問題があるようで、出産後すぐに体重を戻したい気持ちからくる極端なダイエットが増えているからだと言われています。つまり妊婦さん自身の間違った自己管理が大きな原因となります。妊娠中の栄養を考えること、妊娠中の禁煙(受動を含む)、保健指導を受けること、定期健診で妊娠状態を把握することが未熟児を出生しないための自己管理につながります。

全国の未熟児出生率が急激に上昇している中、本県は、ここ数年は横ばい状態です。母子健康手帳を受け取りに来た妊婦さんに保健師・助産師による自己管理の保健指導を行う市町村がここ数年急速に増えています。その成果で未熟児出生率の上昇が止められています。ですから母子健康手帳は必ず妊婦本人が受け取りに行くことが大切です。自己管理の重要性を認識できるのと同時に市町村とつながりもできます。子どもはみんなの宝です。みなさん一人一人が妊婦さんを見守り、すべての子どもが安全に生まれるようにしましょう。