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卵巣がん(2006年9月12日掲載)

青木 陽一(琉大付属病院)

進行するまで症状なし

異常感じたらすぐ受診を

卵巣は子宮の左右にある親指大の臓器で、卵子が成熟し排卵され女性ホルモンを分泌する女性にとって非常に重要な臓器です。一番多い卵巣がんは、卵巣の皮の内側に発生するがんで、次に多いのは、卵子のもとになる胚(はい)細胞と呼ばれる細胞から発生するがんで、十―二十歳代の人に多く見られます。そしてこれは、婦人科のがんの中では最も予後が悪いがんの一つです。

卵巣がんは年々増加の傾向にあり、最近わが国では毎年約六千人が新しくがんになり、約四千人が卵巣がんで亡くなっていると推定されています。はっきりした原因は不明ですが、生活様式の欧米化などとの関連が推測されています。あらゆる年代の女性に見られますが四十―五十歳代が発生のピークです。妊娠・出産の経験が少ない女性、月経異常のある女性、母親や姉妹などの家族に乳がんや卵巣がんにかかった人がいる場合に多く見られ、遺伝も関連が深いと考えられています。

ただし、本当の意味での遺伝性卵巣がん(特定の遺伝子が親から子へ引き継がれる)はわずかで、多くは体質や食生活などが似ているためとされています。卵巣がんの予防のためには脂肪分の多い食事を避け、バランスの良い食事を心掛けると良いといわれています。

どの臓器のがんも、初期には症状はありません。ただ、卵巣がんの場合サイレントキャンサー(静かなるがん)といわれるように、進行するまで症状が出ないことが多いのです。

また、細胞診というよい検査法のある子宮頚(けい)がんや子宮体がんに比べ、卵巣がんには早期発見のためのよい検査手段がありません。そのためおなかにがんが広がった進行がんの方が半数以上というのが現状です。卵巣がはれたり、腹水がたまっておなかが膨らむ腹部膨満感が一番多い症状です。「おなかがふくらんでちょっと苦しい」とか、「最近太ったなあ」程度に思っていたら、実は卵巣がんだったというケースも少なくありません。異常を感じたら(表)すぐに婦人科を受診することが卵巣がんの早期発見には大切です。

婦人科を受診するとまず腫瘍(しゅよう)があるかどうか、腹水があるかどうかを内診、超音波で確認します。卵巣腫瘍が見つかれば、それががんかどうかの確認のために、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像装置)の検査、さらに血液での腫瘍マーカー検査などで診断していきます。しかしながら最終的な卵巣がんの診断には組織検査、つまり手術が必要となります。

卵巣がんの治療は、がんの進み具合や部位、年齢、合併症などから最適な治療法が選択されます。進行した状態で発見されることが多いため化学療法や抗がん剤を併用します。

抗がん剤の開発、治療法の工夫などにより治療成績の向上が見られていますが、依然として進行がんで見つかることが多く、卵巣がんの予後は不良であり早期発見のよい手段、新たな治療法の開発が期待されます。