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多くの命救うため(2006年9月5日掲載)

久木田 一朗(琉大付属病院)

県内に災害医療チーム設置

県民救急フォーラムに参加を

一一九番通報を遅らせてしまいがちな病気に脳卒中があります。何が起きたかわからず、しかもどこにも痛みがないことが多いので、すぐには救急車を呼ばないのです。家族に相談したりしていると、発病初期の治療のために貴重な時間(ゴールデンタイム)が過ぎてしまいます。

ニーと笑い顔をすると顔の片方の動きが変、両手を水平に挙げて目を閉じるとどっちかの手が下がる、ラリルレロと言ってみると言葉が変、体がふらつく、手足がしびれるなどの症状が出現したらすぐに救急車を呼んで、救急病院を受診しましょう。

「災害は忘れたころにやってくる」と言われますが、最近は「忘れる間もなくやってくる」と言えるほどです。「準備をしないでおくという事は、失敗するための準備をしているようなものだ」という言葉もあります。災害時には被災地の医療設備もライフラインも被害を受け、通常の救急受診すらおぼつかない場合もあります。いつおこるかわからない災害に対応し、被災地で一人でも多くの命を救おうと、政府は災害派遣医療チーム(DMAT)という組織を作りました。

DMATは五人で一チームの機動力のある、トレーニングを受けた医療チームです。全国の二百カ所の病院に作り、被災地外から被災地へ緊急出動し、災害現場での急性期(四十八時間以内)の医療活動を行います。病院やライフラインが使えない被災地から自衛隊機などを使って多数の患者を被災地外へ航空輸送することにも参加します。沖縄県では琉球大学にDMATが設置されました。

遠隔医療という言葉をご存じでしょうか。発達した情報通信技術(IT)を医療に活用しようというものです。日本は世界最先端の「IT国家になる」ことを目標に掲げていますが、医療のIT化はまだ十分進んでいるとは言えません。しかし、沖縄県のように遠隔の離島を多く持つ地理的条件で、診療所と支援する総合病院をITで結んで治療や相互の教育に役立てる試みが進みつつあると言えます。

命をおびやかす「突然の心停止」の八割以上が「心室細動」と言われています。心室細動には早期の電気ショックがもっとも効果的ですが、二〇〇四年七月から一般市民も自動体外式除細動器(AED)が使えるようになりました。

以上のような救える命を救うために県民の皆さまを主役として昨年、県民救急・災害フォーラムを開催し、六百名の参加を得てAED講習会や体験コーナー等を実施しました。今年も十八日(敬老の日)午前十時から沖縄コンベンションセンターで、沖縄県との共催でフォーラムを開催します。多数の団体、機関の協力を得、基調講演会ほか多くの企画があり、実際に見て、触って確かめてみましょう。AED講習会の申し込みも受け付けています。

問い合わせ先・南西医療器098(870)1515(代表)。

(第二回県民救急・災害フォーラム実行委員会世話人代表)