頸(けい)動脈は頭に血液を運ぶ大切な血管で、首の横に軽く手を当てると触れることができます。頸動脈エコー検査は図のようにして頸動脈の内膜の状態を観察します。痛みを伴わない十分程度の簡単な検査で、動脈硬化を早期発見することができます。
頸動脈の内膜―中膜(IMT)の厚さは六十歳代で平均〇・九ミリ〜一ミリぐらいで、年齢とともに厚くなっていきます。IMTが一・一ミリを超えると動脈硬化と判断します。
動脈硬化には血管のIMTが全体的に厚くなる場合と、血管壁の一部に脂質や繊維成分の沈着、石灰化、血栓、潰瘍(かいよう)が見られる場合があります。暴飲暴食や脂っこい食事、ストレス、脱水などで血液がドロドロになると、血管内の動脈硬化や潰瘍が、血栓の引き金となり脳梗塞(こうそく)を引き起こすと考えられます。
このような動脈硬化の原因として糖尿病・高血圧・高脂血症・肥満等の生活習慣病や運動不足・喫煙・過度の飲酒など問題ある生活習慣、また仕事や生活上のストレス、さらには以下のような問題のある食習慣が考えられます。
(1)野菜摂取不足―野菜は一日に片手五杯分が必要とされています。いろいろな野菜や果物(中サイズのリンゴが片手一杯分)をバランスよく取ることが大切です。ただし葉野菜には熱によってビタミンが壊れるものもあります。また、サラダもマヨネーズや油の入ったドレッシングではカロリーが高くなってしまい注意が必要です。
(2)たんぱく摂取量が多い―一週間に豚肉・牛肉・鶏肉などを三回以上取る。年齢とともに筋肉量が減るため、運動量を考えてたんぱく摂取量は加減が必要です。
(3)魚を週に一〜二回程度しか取らない―魚にはDHA等の良質の不飽和脂肪酸が含まれており、週に四〜五回は取ったほうがよいと考えられます。
(4)脂っこい料理を好む―牛・豚肉の脂身を好んで食べたり、マーガリン・マヨネーズを好んで料理に使う。脂質も体に必要な栄養素ですが、良質で適量の脂質を取る必要があります。
頸動脈に見られる動脈硬化は心臓・脳などの全身の血管にもでき、心筋梗塞・脳梗塞の原因になると考えられます。当診療所で頸動脈エコー検査を行った五十歳代の36%、六十歳代の約60%に頸動脈硬化が見られました。
動脈硬化を引き起こしやすい生活習慣にあてはまる方は、一度は頸動脈エコー検査を受けられることをお勧めします。そして動脈硬化があれば、原因となる食習慣・生活習慣を見直し、血液をさらさらにする食事と、動脈硬化を予防する食事を心がけ心筋梗塞・脳梗塞を予防しましょう。
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