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ロービジョンケア(2006年7月4日掲載)

照屋 武(てるや眼科クリニック)

今の視機能を最大限活用

適切な対処で生活の質改善

最近の眼科医療の進歩は目覚ましいものがあります。特に白内障手術や硝子体手術の飛躍的進歩が挙げられ、より安全に手術ができるようになりました。また新しい点眼薬の開発など、以前とは比べられないほど治療成績は格段に進歩しています。

しかしながら、現実には失明、あるいは低視覚に陥る方が全くいなくなったわけではありません。網膜色素変性症や遺伝性視神経委縮などいまだ治療方法が確立されていない疾患も多くあります。産科の進歩で極小未熟児の生存率は高くなりました。しかし、その合併症である未熟児網膜症や、高齢化に伴う加齢黄班変性は依然増えており、失明原因の上位を占めています。糖尿病網膜症や緑内障に至っては、中途失明原因の第一位と二位に挙げられ、治療をしても視機能が回復できない状態に陥る患者さんがいらっしゃることも事実です。

そんな中で最近、ロービジョンケアの重要性が叫ばれています。ロービジョンケアとは、最新の医療技術を駆使して適切な治療を行っても、やはり視覚障害が残り低視覚に陥った患者さんに対し、今持っている視機能を最大限に活用して視覚的な生活の質の向上を目指す方法です。

視覚障害とは低視力(見えにくさ)、視野障害(見える範囲が狭い、中心部が見えにくいなど)、羞明(まぶしさ)、複視などの障害をさします。そのため一口でロービジョンケアと言っても、患者さん一人一人の症状や病状の程度によってその範囲はかなり幅広いものとなります。時には眼科だけでなく、視覚障害者協会、盲学校、保健所、福祉関係とも連携を深め、生活の支援や訓練を行っていくことが必要になってきます。

それでも、最初に患者さんが訪れるのはやはり眼科です。そのため眼科でのロービジョンケアは大変重要になってきます。たとえばルーペや拡大鏡、単眼鏡、拡大読書器(テレビモニターに文字や写真を拡大して写せる機械)などの光学的補助具の選定と訓練。まぶしさへの対応。眼球運動訓練。日常生活での種々のアドバイスなどは眼科で十分に説明を受けるべきです。

また身体障害の視覚障害者手帳の申請をきちんと行うことで、拡大読書器は視覚障害の六級から市町村から無償で支給を受けることができます。また一、二級ではルーペなどの便利な補助具の支給もあります。視機能について悩んでいる皆さん! 年だからとか、どうせ治らないからと思ってあきらめてはいませんか?

一度失った視機能は回復するのは難しいかもしれません。でも今、あなたが保有している失われていない部分を、うまく活用して生活できていますか。まずは眼科医に助けを求め、少しでも視覚障害に伴う生活の質を改善する努力をしてみてください。なお、ロービジョンケアは眼科における新しい分野であり、個々の症例で時間がかかるため、予約制をとっている病院もあります。事前に電話をして確かめてから受診されることをお勧めします。