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高血圧と頭痛(2006年6月6日掲載)

久田 均(脳外科クリニックくだ)

直接の原因にはならない

他の病気に伴って出現も

高血圧は頭痛の原因になるのか? 答えは否である。医療関係者ならば反論もあるでしょうが、あくまでも私個人の臨床経験から話を展開させていただきたいと思います。医学書的な根拠がないとか、暴論だと思われても、戯言(たわごと)だとでも思ってご容赦願いたい。

頭痛と一口に言ってもいろいろなタイプがあるわけで、高熱や二日酔いの時のガンガン響く拍動性のもの、頭全体が重苦しく感じるものなどがあります。頭痛については医学的には細かい分類がありますが、ここではそうした堅苦しいことを離れて、単純に頭が痛いこと、すなわち「頭痛」と総称して話を展開させていただきます。

高血圧だけでは頭痛の原因になることはありません(頭重感程度のことはありますが…)。収縮期血圧が二百を超えていても何の症状もなく平然と日常生活を送っている人は大勢います(無論、危険なことなのですが…)。ただし、高血圧の影響で頭痛が増強したり、他の原因、特に頭蓋(ずがい)内の病気に伴って頭痛と高血圧が出現してくることはあります。ここに『血圧が高いから頭痛がするんだ』という誤解を招く原因があるのです。

たとえば、頚椎(けいつい)(首の骨)の変形や副鼻腔(ふくびくう)炎(蓄膿(ちくのう)症に近い状態)は頭痛の原因になります。いずれも慢性的な病気ですが、病状が悪化した時には頭痛が出現し、痛みのために血圧が上昇します。治療によって病状が良くなれば血圧は元の数字に戻っていきます。

このような場合、原因疾患の治療をしなくても高血圧の治療をすると頭痛が軽減することがあります。これは血圧を低下させることで炎症部位への血流が減り、痛みが和らぐためと考えられます。つまり、高血圧の治療は対症療法にすぎないことになります。

怖いのは、頭蓋内の病気に伴って頭痛と高血圧が出現してくる場合です。脳は意外に広く、あまり活動していない部位も存在します。脳出血や脳梗塞(こうそく)などでこれらの部位が障害を受けても、日常生活を送る上では何ら支障を来さないため、本人も周りの人たちも気づかずに見過ごしていることもあるのです。障害を受ける部位や広さにもよりますが、このような場合にも頭痛と高血圧が出現します。

頭痛は頭蓋骨内の圧力の上昇や血管から漏れ出た血液中の刺激物質が原因で生じます。血圧の上昇は、痛みに伴う二次的なもの、あるいは、頭蓋骨内の圧力に抗して血液を脳内へ供給しようとするために生理的に発生します。降圧剤などの薬剤を使用してもなかなか血圧が低下しない場合はこういった状態を疑う必要があります。

いずれにしても、きちんとした診断を受けることが重要です。診断法にはいろいろありますが、個人的にはMRI(磁気共鳴画像装置)による診断が確実だと思います。あちこちの診療科を巡るよりは、結局は最も安く、最短の時間で済むと考えています。頭痛の専門的な知識を持ち、経験の豊富な医療機関を受診することをお勧めします。