沖縄県医師会 > 健康の話 > うちなー健康歳時記 > うちなー健康歳時記2006年掲載分 > 新しいリウマチ治療

新しいリウマチ治療(2006年4月4日掲載)

大浦 孝(おおうらクリニック)

生物学的製剤を開発

症状和らげ関節破壊抑制

リウマチ治療の原則は早期発見、早期治療、継続治療で、現在では治療法が格段に進歩しております。薬物療法、手術療法、リハビリテーション、血漿(けっしょう)交換療法と個々の患者さんに最も適切な、時宜を得た治療法が選択できる時代となりました。

薬物療法では、消炎鎮痛剤を基本として、副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤の併用療法で十分な治療効果が得られます。疼痛(とうつう)は緩和し、関節の動きもスムーズとなり、症状の進行は阻止されます。もっとも、これらの治療はもろ刃の剣でもあり、副作用の発現には細心の注意を要します。

各治療法の適用、その時期と期間は、患者さんの状態に応じて慎重に吟味されます。とはいっても、これらの従来の治療法はいわば総花的・対症的治療法で、必ずしも的を射た治療法とはいえないところもあるのは否めません。

この十年、より的を射た治療法が開発されました。リウマチの原因は不明ですが、その病態、特に進行過程である炎症・免疫反応が分子のレベルで解明され、そこで主役、脇役、善玉、悪玉がリストアップされました。病態の悪循環を断つため、最も肝心な悪玉に的を定めてミサイルを発射する治療法が開発されました。

これまでの薬は、ほとんどが化学的に合成された薬でしたが、近年、生物が産生したタンパク質を利用した薬が作られるようになりました。これが生物学的製剤と呼ばれるものです。最新のバイオテクノロジー技術を駆使して作られるので、バイオ医薬品とも呼ばれています。炎症を引き起こす重要な分子を標的とし、それを徹底的に抑え込むように設計された薬です。その生物学的製剤では、まず抗体製剤が開発されました。

抗体製剤の抗体は、標的とする分子とだけ強く反応するモノクローナル抗体と呼ばれるものです。以前は単一な(モノクローナル)抗体だけを大量に作り出すのは技術的に困難だったのですが、分子生物学的手法が進展したことで、そうした単一の抗体群(モノクローナル抗体)を作り出すことが可能になりました。モノクローナル抗体なら単一物質とのみ反応するので、標的分子にのみ反応させる薬として使えるわけです。

リウマチの薬として、最初はヒトのタンパクで作ることができず、マウスのタンパクからモノクローナル抗体が作られましたが、現在、改良が進み、マウス由来のタンパクを少なくし、その分ヒトタンパクの割合を増やした薬が実際の治療に使われています。

ヒトタンパクの割合から、ヒト75%のキメラ抗体(異なる生物種を複数融合させたものをキメラという)、90%のヒト化抗体、100%の完全ヒト抗体に分けることができます。そのいずれも標的分子とだけ強く反応するので、他の分子の働きには影響を及ぼしません。

このモノクローナル抗体(製剤としては抗TNFα抗体)は米国で開発された薬剤で、症状を和らげるとともに、関節破壊をくい止める効果に優れることから、海外では高い評価を得ており、すでに世界八十一カ国で発売され、約五十万人の患者さんに使用されています(二〇〇四年二月現在)。