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骨髄バンク(2006年3月28日掲載)

新垣 義清(まちなと小児クリニック)

HLA一致の骨髄液採取

多くの人がドナー登録を

骨髄移植という言葉は最近多くの人に知られるようになってきた。白血病や悪性リンパ腫、再生不良性貧血など死につながるような重篤な病気の人の、最後の頼みの綱となる治療法である。簡単に言うと、健康な人の骨髄の中の液を注射器で採取し、患者さんに点滴で入れるという方法である。

この治療法で最も大事なことは患者さんの白血球の型(HLA)と提供する人のHLAを一致させることである。HLAが異なると成功率が極端に低下する。HLAは遺伝によって決まるが、同じ両親から生まれた子供には四通りの型が存在する。理論的には四人の同胞がいれば一人は型が合うということになるが、少子化の進んだ現在ではきょうだいの中から見つけることは困難になってきている。

一般の人でHLAの一致する割合は多い型で数百人に一人、少ない型の場合は数万人に一人しかいない。患者さんが個人的にHLAの合う人を探すのは極めて困難である。

骨髄バンクは一人でも多くの患者さんにHLAの合った、骨髄液を提供できる人(ドナー)を探すための組織である。患者関係者の人や多くのボランティア、医療関係者の努力により一九九一年設立された。

血液センター等でドナー登録を呼び掛け、応募した人のHLAがバンクに登録される。一方、骨髄移植を必要としながら血縁者にドナーがいない患者さんのHLAも登録される。両者のHLAが一致した時からバンクを通しての骨髄移植の準備が開始される。ドナー候補者はあくまで善意のボランティアであり、その意思確認をしっかり行うことは大切である。

バンクの委託を受けた民間のコーディネーターの人が電話で意思を確認した後、ドナー候補者、コーディネーターそして調整医師である私たちの三者面談が行われる。その席での調整医師の役割は、骨髄移植の必要性や方法、骨髄液を採取する際の全身麻酔の危険性や合併症など、医学的な面からの説明を行うことである。

その後ドナー登録者の家族を含めて二度目の面談があり最終意思確認を行う。最終意思確認ができた場合、患者さん側の病院にバンクよりドナー候補者決定が連絡される。そして骨髄移植の日程が調整されることになる。

ドナー登録者は昨年十二月現在で約二十三万人となっている。一方、患者登録数も三千人おり、昨年一年間のバンクを通しての移植は八百五十例を越している。沖縄県の登録者は七千五百人で、九州では福岡についで二位となっている。人口比では恐らく全国一であろう。三十万人の登録があれば移植を必要としている患者さんのほぼ全員が、移植を受けられると考えられており、バンクでは現在も熱心にドナー登録を呼び掛けている。

新聞などで時々心臓移植のため、外国に行く患者さんの記事を目にすることがあるが、同じように命の助けを求めてドナーの現れる日を一日千秋の思いで待っている人がたくさんいるのである。十八歳から五十四歳までの健康な人なら誰でも登録できる。多くの人の登録が待たれている。(骨髄移植推進財団調整医師)